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「健康長寿国日本」をめざして

埼玉県 /神奈川県横浜市 の取り組み

「健康長寿国日本」をめざして

~これからは自治体と民間企業が協働する時代~

「健康長寿国日本」をめざして

[提供] オムロン ヘルスケア株式会社

平成29年10月20日、東京・日本橋で、最近顕著になっている自治体の健康事業の取り組みをテーマにしたセミナーが開催された。「医療問題の適正化」「健康寿命の延伸」「活気あるまちづくり」―。掲げられたテーマに自治体はどのように対処すれば、健康事業をうまく運営できるのか。ヒントは、講演中に頻繁に出てきた“ 協働”という言葉にあるようだ。

※下記は自治体通信 Vol.11(2018年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

 座長あいさつで登壇した辻氏は、冒頭でセミナーの主旨を語るとともに、多くのエビデンスを交えながら、歩くことでえられる健康効果と医療経済効果の話を展開した。なかでも自身が行った研究を引き合いに出し、「国民が毎日1,000歩(時間にして約10分)余計に歩けば、ひとり当たりひと月の医療費が1,341円減る」といった話は、参加者の関心を大きくひいた。

 また、日本人の歩行数は減る一方であることも問題提起し、「歩きたくなるまちづくり、歩きやすい環境づくり」が解決策であることも述べた。

「平成29年度は、まち、ひと、しごとの創生総合戦略の中間年であり、既存の取り組みを加速させるために、新たな施策によって地方創生の新展開を図るべき」と語ったのは、内閣官房の唐澤氏。具体的な施策として地方創生に資する大学改革、地域資源を活用した仕事づくり、遊休資産の活用、政府関係機関の地方移転など、東京一極集中の是正をうながし、新しい人の流れをつくることを提案した。そうすることで地域の生活を確保することができ、子育て支援、介護など、わたしたちが抱えている問題も解消できると説明した。

 自治体が取り組む健康事業の成功事例として、横浜市健康福祉局の粟屋氏が登壇し、講演した。粟屋氏は3年目を迎えた「よこはまウォーキングポイント」 事業を振りかえり、当事業が市民の健康意識向上だけではなく商店街振興にもつながり、まちの活性化に結びついていることを述べた。そのうえで、自治体が健康事業を行う意義も唱えた。

 また、行政だけではなく、民間企業との協働事業が功を奏したことから、平成30年度以降の第二期協働事業者には既存のオムロン ヘルスケア、凸版印刷の2社に、ドコモ・ヘルスケアがくわわり、さらに事業を展開していくと語った。

 もうひとつの成功事例では、健康寿命の延伸と、医療費の抑制に力を入れている埼玉県が講演を行った。健康長寿課の古海氏は、埼玉県が抱える急速な高齢化にともなう医療費の増大を大きな課題としたうえで、数年前から県主導で、医療費抑制のためのモデル事業を実施していたことを語った。

 その事業結果をカタチにしたのが「埼玉県コバトン健康マイレージ」であり、民間企業との協働でICTを駆使した基盤づくりが当事業の特徴と述べた。ICT活用の利点として幅広い年齢の参加者が望めること、参加者とのコミュニケーションもスムーズに行うことができ、運営側の手間が省けることなどをあげた。

 座長・辻氏の司会のもと、横浜市 粟屋氏、埼玉県 古海氏にくわえて、国土交通省 山田大輔氏、経済産業省 入江奨氏、ウエルシア薬局 佐藤信栄氏、オムロン ヘルスケア 松田高明氏が参加し、健康事業にかんする意見交換が行われた。パネラーが討論したテーマは、「ウォーカブルの視点に立った歩きたくなる環境づくり」「健康事業を訴求するためのしかけづくり」「健康事業の今後」「ICT利用の課題」「自治体と民間企業の連携」など。異なる立場ではあるが、健康事業に携わるパネラーたちの話に、会場を埋めつくした約200人の参加者たちは、熱心に聞き入っていた。

次のページより、協働事業として健康事業に取り組む自治体と民間企業のインタビューを掲載▶▶▶


埼玉県 /神奈川県横浜市 の取り組み

「健康長寿国日本」をめざして

協働で生まれた新たな健康事業は「健康長寿埼玉プロジェクト」の集大成となる

埼玉県知事 上田 清司

[提供] オムロン ヘルスケア株式会社

“埼玉から日本を変える”。その意気込みを表すかのように埼玉県は全県展開の健康事業をスタートさせた。モデル事業を含めると費やした時間は5年。浮き彫りになった課題は民間企業との協働で解決し、基盤となる新事業のプラットフォームを完成させた。新事業誕生の足跡を、埼玉県知事の上田氏に聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.11(2018年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

埼玉県データ

人口: 731万632人(平成29年12月1日現在) 世帯数: 306万9,179世帯( 平成29年12月1日現在) 予算規模: 2兆7,371億 3,899万円 (平成29年度当初) 面積: 3,797km² 概要: 関東平野の内部に位置する内陸県で山地面積が3分の1、残りの3分の2を平野がしめている。県の面積は国土の約100分の1にあたり全国で39番目の広さとなる 。おもな河川は、秩父山系を源とする荒川と利根川。

新事業成功のカギは無関心層の取り込み

―埼玉県は平成24年度に「健康長寿埼玉プロジェクト」を開始していますが、どのような背景があったのでしょう。

 埼玉県の高齢化は、ここ10年、ものすごい勢いで進んでいます。それにともない高齢者の医療費もあがり、県の医療費は平成20年度と比較すると約1.5倍にも膨れあがりました。

 そうした背景もあり、健康長寿につながる取り組みを県全体に広げ、県民一人ひとりが健康づくりに取り組む社会をめざす、そういった試みもあり、「健康長寿埼玉プロジェクト」を開始したのです。

―具体的にどのような施策を行いましたか。

 市町村に呼びかけて「毎日1万歩運動」「筋力アップトレーニング」など、地域の特色にあった健康づくり事業を県内7市町村にモデル事業として取り組んでもらいました。

 その結果、1年間の医療費を抑えられたことはもちろん、健康状態の向上、住民同士の交流などさまざまな効果が出ました。しかし、結果的に高齢者対象の事業になってしまった。30代、40代の働き世代の参加は少なく、違った課題が浮き彫りになりました。くわえて、参加者の「二極化」という現象も明るみになった。高齢者でも健康に興味がある人は、進んで参加しますが、興味のない人は参加しない。無関心層の参加をうながすために、「埼玉県コバトン健康マイレージ」事業が生まれたのです。

情報の「見える化」で新事業の拡大をめざす

―4月に始まったばかりの事業ですが、状況はいかがでしょう。

 現在、参加者は2万人を超えたと聞いています。

 歩数を送信するタブレット端末は、県がすべてを整備するのではなく民間企業からも提供してもらっています。平成29年10月からは全国規模の企業の参入が決まって、設置数も増えました。当事業はスマートフォンからの参加も可能で、専用アプリの導入に際しても民間企業の力を借りました。参加者がもらえる賞品にかんしても県内をはじめとする多数の企業が協力してくれています。民間企業と手を取りあって進めた結果、今後が楽しみな事業になりました。

―「コバトン健康マイレージ」は全県展開の事業ですが、県全体をコントロールする際に心がけていることはありますか。

 状況を「見える化」して、コントロールすることです。その際、大事なのは10年単位で物事を見ていくということ。最初の1、2年はどうしてもズレが発生しますが、最終的に横並びになっていくものです。それには過去に実例があって、以前、全国の不登校出現率の統計が発表されましたが、埼玉県はワーストから数えた方が早い順位でした。ところが、公立中学校の不登校出現率を順位立て、63の市町村に配布した10年後には6位まであがっているのです。「コバトン健康マイレージ」も同じ。まだ始まったばかりの事業ですが、現状を「見える化」して市町村の参加もうながしていきたいと思います。これだけ多くの企業の協力をえて、生まれた事業なのですから。

―「埼玉県コバトン健康マイレージ」の概要を教えてください。

 歩いた距離や特定健診の受診に応じてポイントがたまり、ポイントを使うと、抽選でさまざまな賞品がもらえるというものです。平成29年4月から始まり、現在、26市町村と保険者の4団体、4事業者の職員が参加しています。昨年度から市町村など参加団体や民間企業の方と会議を重ね、意見交換をしながらプラットフォームをつくりました。

―民間企業と組んだことで生まれたメリットはどこにあると考えますか。

 いろいろとアイデアをいただいたことです。当事業の課題は、いかに無関心層を取り込むかでした。しかし行政の人間だけだといい発想がうかばない。そこで民間企業の方にいただいた「参加者を競わせる」案を取り入れたのです。それは、参加者を複数のグループにわけて歩数を競い、該当グループのトップになれば、上位のグループにステップアップできるリーグ戦の考え方といったものです。

―今後、この事業をどのように運営していきたいですか。

 参加者は2万人を超え、平均年齢は55歳。働き世代の参加も増えていますので、初年度としては上出来です。

 すでに、来年度以降には、新たな参加市町村も決まり、協賛企業の参加問い合わせも増えています。埼玉県は医療費の増大が大きな問題となっていますので、当事業を通して県全体で抑制していきたいと考えています。

上田 清司(うえだ きよし)プロフィール

昭和23年、福岡県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了。昭和51年新自由クラブ立党に参画。昭和55年より、衆議院選挙に出馬し、4度落選するが、不屈の闘志で平成5年に初当選を果たす。以降、3期連続当選。平成15年には無所属で知事選に出馬し当選。現在4期目。


神奈川県横浜市 の取り組み

「健康長寿国日本」をめざして

活力ある超高齢社会を築くために健康事業に「オール横浜」で取り組む

横浜市長 林 文子
[提供] オムロン ヘルスケア株式会社

高齢者の増加、子育て・働き世代の減少、出生数の低下。社会保障や医療費問題など抱える悩みは、市政でも同じだ。そんな状況下、横浜市はいち早く「健康事業が、解決の糸口になる」と判断し、健康長寿日本一をめざして、さまざまな取り組みを行ってきた。林市長にその全貌を聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.11(2018年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

神奈川県横浜市データ

人口: 373万4,012人(平成29年12月1日現在) 世帯数: 167万5,027世帯(平成29年12月1日現在) 予算規模: 3兆5,709億円(平成29年度当初) 面積: 435.29km² 概要: 神奈川県の東部に位置し、同県の県庁所在地。政令指定都市のひとつであり、18の区から成り立つ。みなとみらいや中華街をはじめ観光地も多く、休日となると多くの人でにぎわう。

楽しみながら継続できる環境づくりが発展の要因

―これまで横浜市では健康事業にかんして、どのような取り組みを行ってきましたか。

 健康増進法にもとづく市町村健康増進計画「健康横浜21」の第1期計画を策定した当時から、生活習慣病の予防に重点を置いて、さまざまな取り組みを進めてきました。平成25年スタートの第2期計画では、楽しみながら続けられる「環境づくり」に注力し、平成26年11月に取りまとめた「よこはま健康アクション」には、「個人の生活習慣の改善」と「社会環境の改善」の両輪で取り組みを進めていくことを盛り込んでいます。

―具体的にどのようなことを始めたのでしょうか。

 「個人の生活習慣の改善」に向け、日常生活のなかで楽しみながら、継続して健康づくりに取り組んでもらえる「よこはまウォーキングポイント事業」を立ち上げました。平成26年11月の事業開始以来、30万人の参加を目標に取り組みを進め、現在、約29万人の市民、800を超える事業所の皆様が参加しています。平成30年4月からはアプリを導入し、より幅広い世代へ「歩くムーブメント」を拡大したいと考えています。

健康事業を柱に魅力ある街づくりをめざす

―事業開始から3年でこれだけの参加者が集まった理由はどこにあると考えていますか。

 継続的に健康事業に取り組んだことで、市民の皆様に健康づくりの関心が高まったこともありますが、歩数に応じたポイントで抽選により景品が当たるといった、楽しみながら参加できる仕組みをつくったことが大きいと思います。資源やノウハウを提供してくださる民間企業の皆様との協働で実現しました。

―事業の成果はいかがですか。

 参加をきっかけに歩数が増えた方も多く、参加者の9割以上の方が健康だと感じているようです。健康感の向上にくわえ、周囲との会話やあいさつが増えるなど地域のつながりにも効果が出ています。

―市長が描く今後のビジョンを教えてください。

 団塊の世代が75歳以上となる時代が迫るなか、市民の皆様が健康に対する意識をさらに高め、年代や健康状態に応じて、積極的に健康づくりに取り組んでいただけるよう働きかけていきます。

 まずは、「よこはまウォーキングポイント事業」による健康づくりの機運の高まりを活かし、保健活動推進員や食生活等改善推進員をはじめとする地域の皆様とともに、健康増進につながる習慣を定着させ、さらなる健康寿命の延伸を図ります。

 また、健康づくりに時間を割くことが難しい働き世代に対しては、市内事業所の健康経営を支援するなど、ライフスタイルにあわせた取り組みを推進します。子どもから高齢者まで、すべてのライフステージにあわせた切れ目のない取り組みを「オール横浜」で進めていきたいですね。

―横浜市はいち早く民間企業との協働で事業を展開しましたが、その理由を教えてください。

 横浜市は従来から協働を推進してきた自治体ですし、「よこはまウォーキングポイント事業」をスタートさせるにあたって、多くの市民に利用してもらう事業にするには、民間の柔軟な発想やアイデアの活用が不可欠と考えていました。

―実現したアイデアとはどのようなものでしょうか。

 たくさんありますが、ひとつは歩数計のデータを読み込むリーダーの設置場所を商店街の店舗を中心にして、地域活性化の視点を盛り込んだことです。

 今回、店舗にリーダーを設置したことで、店舗の方からは「お客さんが増えた」「他店舗との交流が盛んになった」といった喜びの声をいただいています。

―これまでの民間企業との協働事業を振りかえって、いまどのような感想をもっていますか。

 協働とひとことでいえば簡単ですが、違う組織が一緒にものごとをつくり上げるということは、手間も双方の柔軟性も必要です。でも、民間企業の知恵や発想力が発揮されることで、行政の枠を超えた事業展開ができるようになります。

 目標の参加者30万人まであと少し。いまも定期的に会議の場を設けていますが、今後も意見交換をしながら事業を充実、発展させていきたいですね。

林 文子(はやし ふみこ)プロフィール

昭和21年、東京都生まれ。都立青山高等学校卒業。東洋レーヨン株式会社(現:東レ株式会社)、松下電器産業株式会社(現:パナソニック株式会社)勤務後、ホンダオート横浜株式会社に入社。その後、複数の企業で代表取締役を務め、平成21年に横浜市長に就任。文筆家としての顔ももち、「一生懸命って素敵なこと」「不思議なほど仕事がうまくいく『もう一言』の極意」(ともに草思社)など作品も多数。


支援企業の提言

「健康長寿国日本」をめざして

血圧測定の機会を増やして脳・心血管疾患の発症ゼロ社会を実現したい

オムロン ヘルスケア株式会社 代表取締役社長 荻野 勲 / 支援自治体:埼玉県 / 神奈川県横浜市
[提供] オムロン ヘルスケア株式会社

ウォーキングを取り入れた健康事業が自治体に浸透していくなか、健康医療機器、サービスのリーディングカンパニーでもあるオムロン ヘルスケアは、毎日の家庭での血圧測定を提唱している。ここでは、同社代表取締役社長の荻野氏を取材。なぜいま、血圧測定が必要なのかを聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.11(2018年2月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

日ごろの血圧測定で脳・心血管疾患を未然に防ぐ

―自治体が展開する健康事業をどのように見ていますか。

 住民が健康で幸せに暮らすというのはとても大事なことですし、それによって街も活気づきます。

 糖尿病などの生活習慣病は、自分で予防できますので、自治体が健康にかんする気づきを与えることは非常にいいと思います。「自分の健康状態を知る」ことが、健康管理上、もっとも重要ですから。

―オムロン ヘルスケアでは現在、血圧測定の重要性を訴求していますね。

 はい。当社はいま、脳・心血管疾患発症ゼロをめざす「ゼロイベント」を展開しています。

 依然、脳・心血管疾患は、高い確率で発症しており、日本における死因の上位に位置しています。脳卒中や心筋梗塞などは、高血圧が起因となり引き起こされる病気。ですから高血圧だということを把握して、早期に治療を開始することが、未然に重篤な病気の発症を防ぐ対策につながります。そのためには日ごろの血圧測定が重要なのです。

住民が血圧測定する場を自治体に用意してほしい

―簡単に高血圧患者を発見する方法はありますか

 とにかく血圧を測定する機会をつくることです。じつは当社では、全社員を対象に「オムロン ゼロイベント チャレンジ」という取り組みを実施しています。

 これは毎日、血圧測定を行ってもらい、各自で適正な血圧値をめざしてもらうというものです。実施してわかったのは、社内に思った以上に高血圧患者がいたことです。しかも30、40代の働き世代の人が多かった。これと同じことを自治体にも実施してもらいたいですね。ウォーキングのイベントなど参加者が集まる機会があれば、血圧測定も同時に実施する。そして高血圧の人がいれば、病院に行くようにうながしてもらう。そのようにして参加者には血圧を測る習慣をつけていただきたい。

―今後、住民の健康管理に対し、どのような支援を考えていますか。

 まずは、商品開発を通じて支援していきたいです。ストレスなく、日常の生活の中で意識することなく計測できたらいいですよね。すでにウェアラブル血圧計といった商品も開発していますが、いまは血圧値や脈拍など測定した生体情報しか知ることができません。今後は、血圧を測定した場所や状況などが情報として一緒に残る血圧計があれば、いままで以上に精密な健康管理ができますね。たとえば、「あなたは運動した後、血圧が上がりやすいから気をつけたほうがいい」とか、「寒いところに行ったら血圧が上がるから注意しよう」など、生活のなかでも心がけるポイントが把握しておけます。

 近い将来、脳・心血管疾患発症ゼロを実現するためにも、血圧計を通していろいろな情報を提供していきたいですね。

埼玉県と横浜市が展開する健康事業に参画したオムロン ヘルスケア。担当者の松田氏に、成功の秘訣と健康事業がもつ今後の可能性を語ってもらった。

自治体が示す「本気」が地域や民間を巻き込む原動力

―健康事業を成功させるコツはなんでしょうか。

「インセンティブ」「楽しさやわくわく感」「成果や効果の実感」。この3つのポイントを参加者目線で導入することです。どれかひとつが欠けても継続することは難しいでしょう。

 また、「自治体がすべての住民を健康にするんだ」という「本気」を示すことも必要です。スタートする前の準備段階で、その姿勢を示さなければ、誰も前向きには取り組んでくれませんし、地域や民間を巻き込むこともできないでしょう。

―どのように地域や民間を巻き込んだのですか。

 すべては仕組みづくりの段階から始まります。ウォーキングでいえば、測定機器も歩数計だけではなく、スマートフォンで計測できるアプリやリストバンド型のウェアラブルデバイスを用意したこと。

 また、ポイント付与する仕組みや歩数のランキングなど、楽しみながら続けることができるコンテンツを用意し て、住民に対して「すごい」と思わせたことです。

自治体の横のつながりが地域振興のきっかけになる

―逆に注意すべきことはなんでしょう。

 運営側が成果を急ぐあまり、参加者にひんぱんな測定を義務づけたり、行動を督促してしまったりするということですね。

 予算をかけた取り組みをするわけですから、事業成果にかんする報告や説明責任は避けられません。しかし、それをそのまま参加者に義務のように押しつけてしまっては本末転倒になってしまいます。

―今後、健康事業をどのように発展させていきますか。

 ウォーキングを通して地域間交流ができないかと考えています。事業を通じて、それぞれの地域の参加者同士がウォーキングコースを訪問し合い、交流が生まれるとさらに住民の関心も高まるのではないでしょうか。自治体のなかでも行政の横連携ができると、地域産業を巻き込んで、より活力をもたらすと思います。

荻野 勲(おぎの いさお)プロフィール

昭和37年、東京都生まれ。日本大学理工学部電気学科卒業後、昭和60年、立石電機株式会社(現:オムロン株式会社)に入社。その後、オムロン ヘルスケア株式会社 新規事業開発センター事業開発部長、医療機器事業統轄部長、オムロンコーリン株式会社 代表取締役社長、オムロン ヘルスケア株式会社 執行役員常務、取締役執行役員専務、取締役執行役員副社長などを経て代表取締役社長に就任。



松田 高明(まつだ たかあき)プロフィール

石川県生まれ。オムロンアルファテック株式会社(現:アルファテックソリューションズ株式会社)に入社し、社会システムの開発業務に従事。平成26年にドコモ・ヘルスケア株式会社に出向し、プラットフォーム企画、ソリューション営業の責任者を歴任。平成29年より現職。

オムロン ヘルスケア株式会社

設立 平成15年7月
資本金 50億円
売上高 1,013億円(平成29年3月期:連結)
従業員数 680人、グループ 4,398人(国内715人、海外3,683人、平成29年3月末現在)
事業内容 家庭用・医療用健康機器の開発・販売、健康管理ソフトウェアの開発・販売、健康増進サービス事業の展開など
URL http://www.healthcare.omron.co.jp/
お問い合わせ電話番号 03-6718-3765 (平日9:00〜17:00)
お問い合わせメールアドレス cd_japan@ssa.omron.co.jp