福島県 の取り組み

福島県の活性化が加速している。国の復興支援をテコに、長期ビジョンにもとづいた戦略的な産学官の連携と企業誘致を県庁が推進しているからだ。その取り組みは、ほかの自治体にも参考になる材料が多そうだ。そこで福島県商工労働部理事で企業誘致を担当する鈴木氏に、同県の活性化戦略などを聞いた。
※下記は自治体通信 Vol.1(2014年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
ロボットベンチャーなどが進出
―福島県に進出する企業が増加していると聞きました。その理由を教えてください。
さまざまな支援メニューを活用した企業の進出が増えているからです。県では、経費を最大4分の3まで補助する「ふくしま産業復興企業立地補助金」や、税制優遇を受けられる「ふくしま産業復興投資促進特区」などを用意しています。敷地面積1000㎡以上の工場の新・増設は、平成24年、25年ともに102件に達し、リーマン・ショックが起きる平成20年以前の水準まで回復しています。
県が立地補助金指定を行った企業数は、平成26年4月現在で405社。これにより、約5000人の雇用創出が実現する見込みです。指定を受けたおもな業種は、震災以前からの主要産業である輸送用機械関連や半導体関連のほか、県が震災後の産業復興の2本柱に位置づけている医療・福祉機器関連と再生可能エネルギー関連など。この分野でのベンチャー企業などの進出が官民連携で進んでいます。
―福島県ではどのような官民連携を行っているのですか。
代表的な事例は、東京に本拠をおく技術・特許評価会社で、複数の新産業育成ファンドを運営しているベンチャーラボとの連携です。
同社は震災翌年に新生銀行などと福島復興に向けた「ふくしま成長産業育成ファンド」を組成し、県と新産業ベンチャーとの橋渡し役を担っており、医療・福祉用ロボットスーツ「HAL」を開発し、東証マザーズに上場しているサイバーダインの福島進出を支援してくれました。また、いわゆる30km圏内で一時、避難していた広野町では、原発事故の影響により閉鎖を余儀なくされた工場の再生に尽力してもらっています。
民間会社との連携がカギ
―ベンチャーラボは広野町でどのような支援を行ったのですか。
工場の再建をめざす従業員たちが県の支援メニューを活用して新たに会社を設立し、新会社が工場を買い取る形で操業を再開するまでの実務支援などを提供してくれました。また、もともと大型トラックの部品などを製造していたのですが、同社のビジネスマッチングにより、現在はロボット産業や再生可能エネルギー分野にも挑戦しています。
昨年から南相馬市で藻類バイオマス生産・利用技術の研究開発が始まりましたが、これも同社の協力と国への政策提言で実現しました。ほかにも、福島でイノベーティブな事業を起こそうという志のあるベンチャー企業などを紹介してもらっています。同社のように政策提案力をもった全国ネットの民間会社との連携が地域活性の強力な助けになると感じています。
―今後の目標を教えてください。
これからも“新生ふくしま”を実現するため、全力を注ぎたいですね。
そのための重点産業のひとつである医療機器の県内生産金額は、平成24年に初めて1000億円台を突破。全国4位に上昇するなど成果を出しています。また、県の助成を活用し、サイバーダインが郡山市にロボットスーツ「HAL」や循環器の検査・診断システムなどの開発・生産拠点の新設を決めるなど、医療分野における新産業も福島の地で着実に育ちつつあります。
再生可能エネルギーについても、今年4月に産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所が開所するなど、最先端の研究開発・産業創出拠点の集積が進んでいます。
国内外からの支援に感謝するとともに、県の中長期ビジョンである「世界モデルの技術と産業構造をもつ“ふくしま”」を実現するため、産学官連携により新たな成長分野の創出に挑戦していきたいですね。
鈴木 精一(すずき せいいち)プロフィール
商工労働部理事(企業誘致担当)
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