
※下記は自治体通信 Vol.52(2023年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
近年、教育現場で大きな社会問題となっている不登校児童・生徒の増加。文部科学省の調査*によると、その数は直近の令和3年度まで9年連続で増加しているという。そうしたなか、教育分野に実績をもつシステム開発ベンダー、富士ソフトの三村氏は、「メタバース技術を活用した新たな不登校支援ソリューションが注目されており、自治体での実証実験も始まっている」と語る。同社の木村氏とともに、ソリューションの内容や実証実験での成果などについて聞いた。
*調査 : 「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」


対面で人に会うことに、怖さや不安を感じる子も
―不登校児童・生徒の増加が大きな社会問題になっていますね。
三村 はい。コロナ禍での休校や活動制限など急激な環境変化が要因と考えられます。各自治体では「適応指導教室」を設け、民間のフリースクールとも連携して社会的自立を後押ししていますが、不登校生の数は増加傾向にあります。
木村 その理由のひとつは、場所の問題です。適応指導教室の遠方に住む児童・生徒にとっては、出席することが物理的なハードルになり得ます。また、コロナ禍により対面で人に会うこと自体に怖さや不安を感じる不登校生も相当数おり、それが原因で適応指導教室やフリースクールではカバーしきれないケースが増えています。
―行政においては、どういった対策が考えられますか。
三村 不登校生に、適応指導教室などに加えて新たな居場所を提供することが重要であり、GIGAスクール構想の端末で自宅などから通えるバーチャル空間が有効な選択肢と考えられます。当社では、メタバース技術を駆使したバーチャル教育空間『FAMcampus(ファムキャンパス)』を開発し、令和4年4月から提供しています。これはアバターとなって通える「学校以外の学びの場」であり、不登校生に対しても新たな居場所の選択肢となるのではないかと考えました。令和4年7月に文部科学省の公募事業「先端技術・教育データの利活用推進事業」に採択され、小金井市(東京都)と実証実験を行っています。
96%が「楽しかった」と回答
―詳しく教えてください。
木村 令和4年12月から翌年1月までの2ヵ月間、同市の市立小中学校の不登校生215人を対象に参加者を募集し、32人が参加しました。そこでは週4日、午前中の2コマを用意し、算数・数学と英語を学ぶ「おもしろ指導者による特別授業」を体験してもらいました。参加者へのアンケートでは96%が「授業が楽しかった」と回答しています。保護者も75%が取り組みを「評価できる」と回答し、しかも、50%以上が「子どもに変化があった」と答え、「積極性が増した」という声もありました。参加してくれた32人のうち、19人は適応指導教室に通えていなかった子どもたちだったこともあり、小金井市教育委員会からも「支援の輪が広がった」との評価をいただきました。
―今後、自治体をどのようにサポートしていきますか。
三村 当社では、実証実験で得られた知見をもとに、バーチャル空間での不登校支援に不可欠な4要素を「不登校支援パッケージ」として提供しています。4要素とは、『FAMcampus』という「場」以外に、充実した「カリキュラム」、それを楽しく教える「講師」、不登校生をサポートする「支援専門員」です。我々は『FAMcampus』を通じ、不登校生一人ひとりの自立や自己肯定感の向上につなげる取り組みに貢献したいと考えています。
木村 また、当社では自治体を対象に、不登校支援の実践例やソリューションの詳細を紹介するオンラインセミナーを開く予定です。ぜひお問い合わせください。

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設立 | 昭和45年5月 |
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資本金 | 262億28万円 |
売上高 | 2,787億8,300万円(令和4年12月期:連結) |
従業員数 | 1万7,819人(令和5年6月末現在:連結) |
事業内容 | システム開発、ネットビジネスソリューション提供など |
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