
福島県の取り組み
職業体験を通じた人材育成①
こどもが主役の「職業体験」が、地域への誇りと愛着を育てる
※下記は自治体通信 Vol.49(2023年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
地域経営の持続可能性をいかに高めるか。人口減少や少子高齢化が進む多くの自治体にとって、共通の課題と言えよう。この課題に対して、福島県相双地方振興局では、将来を担うこどもたちに、地域の魅力を知ってもらうために、地域を担う企業や地場産業について理解を深める「職業体験」を実施し、大きな反響を得たという。同局前局長の岸氏に、取り組みを実施した経緯とその効果について、詳しく聞いた。

地域への誇りや愛着を育める、新たな取り組みが必要
―新たな「職業体験」の取り組みを行った経緯を教えてください。
福島県の沿岸部に位置する相双地方は、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故の影響により、急激な人口減少と労働力不足が深刻な問題となっています。そこで当地方振興局では、地元企業の人手不足解消とともに、地域のこどもに夢や希望を持ってもらうために、科学技術やモノづくりを楽しく学べる「こども科学祭」を10年間にわたり実施してきました。そこでは一定の成果を上げましたが、今後は地元企業への理解促進や就職へとつなげたり、地域への誇りや愛着が育まれたりするような取り組みへとさらに発展させたいと考えていました。そんなとき、インターネットで『Out of KidZania』という職業体験イベントの記事を読んで興味を持ち、「キッザニア」を運営するKCJ GROUPへ問い合わせをしました。
―どこに興味を持ちましたか。
こどもが主役となる世界観のもと、報酬を伴うリアルな職業体験を通じて、職業それ自体に加え社会規範に対する深い理解につなげるという『Out of KidZania』の考え方に興味を持ちました。また、KCJ GROUPには施設運営に加えて、多様なキャリア教育プログラムの豊富な知見があります。これらへの期待から、『Out of KidZania』の誘致を決めました。
開催に向けてはまず、こどもたちにリアルな体験をしてもらうために、地域内の実際の職場や店舗を活用した職業体験プログラムを企画しました。そのうえで、プログラムへの参加を表明してくれた24社26プログラムに対して、KCJ GROUPがそれぞれの仕事の意義や手順について詳細なヒアリングを実施し、当日の体験シナリオを作成。企業担当者向けにこどもへの接し方などの研修も行い、見事に「キッザニア」の世界観をつくりあげてくれました。
「地域のためにがんばる仕事は、かっこいい」
―イベントはいかがでしたか。
昨年10月1、2日両日の開催で、予想を上回る1,530人に来場いただきました。「キッザニア」の知名度の影響か、このうち約6割が相双地方以外からの参加でした。こどもたちからは、「地域のためにがんばる仕事はかっこいい」「また参加したい」といった感想が聞かれ、一様に満足度が高かったようで、こどもたちのキラキラした真剣なまなざしがとても印象に残りました。さらに、参加企業からも「自分たちの仕事を見返す良い機会になった」との声が寄せられました。
今回の実績が高く評価され、令和5年度は全県をあげて複数ヵ所で開催することが決まっています。今後も継続して開催することで、地域のこどもたちや地元で働く人々が元気を取り戻し、地域に誇りと愛着を持てるきっかけにしていきたいと考えています。
支援企業の視点
「生きる力」を養える職業体験なら、地域ならではの魅力を伝えられる

―こどもたちへの職業体験に関心を持つ自治体は多いですか。
とても多いです。就職で都会に出る若者に、いかに地元へ残ってもらうか、多くの自治体が頭を悩ませています。企業セミナーのようなかたちで情報だけを伝えても、若者にはなかなか響きません。一方で、自ら体験した記憶、それも好奇心と探求心にあふれたこども時代の体験は深く記憶に残りますから、こどもへの職業体験はとても有効な施策だと思います。なかでも当社が展開する『Out of KidZania』は、ほかとは違う価値があると、多くの自治体に評価されています。
―どのような違いがありますか。
「キッザニア」のポリシーは「こどもが主役の街」であり、こどもを一人の大人として接します。「キッザニア」がつくる職業体験のシナリオは、単に仕事の手順を教えるのではなく、働く人の「想い」を伝えることを大切にしています。その体験を通じて非認知能力、すなわち「生きる力」を養うのも目的のひとつです。この「キッザニア」の世界観を守ったプログラムを全国どこででも開催できるのが『Out of KidZania』の特徴です。地元企業や地場産業の参加を募ることで、その地域ならではの仕事の魅力を伝えられると、多くの自治体から反響が届いています。
―自治体へのメッセージをお願いします。
『Out of KidZania』は、こどもだけではなく、参加企業にも「新たな気づきが得られた」「自身の仕事のやりがいを再認識する機会になった」と好評で、地方創生の一環として実施する自治体が増えています。ぜひお問い合わせください。
福岡県福岡市の取り組み
職業体験を通じた人材育成②
未来を担うこどもによる「職業体験」が、水道事業への深い理解を促した
総務部 総務課長 武藤 裕嗣
総務部 総務課 広報広聴係 西 沙綾
ここまでで紹介した、福島県相双地方振興局が行ったこどもたちによる「職業体験」の取り組み。同様のプログラムを、「市の事業」に対する理解促進、さらには持続的な事業運営を目的に実施した事例がある。福岡市(福岡県)水道局による取り組みである。ここでは、同市水道局総務課長の武藤氏と、同課広報広聴係の西氏に、取り組みを実施した経緯とその効果について聞いた。


水道創設100周年を記念し、こども向け施策の強化を検討
―こども向けの職業体験イベントを実施した経緯を教えてください。
武藤 令和5年3月に当市が水道創設100周年を迎えることから、記念事業の一環として、次の100年を担うこどもたちに向けた企画を検討していました。企画の狙いとしては、世界トップレベルの低い漏水率など、市の水道事業への理解を深めてもらうこと。節水の意識をこどもたちに受け継いでもらうこと。そして、将来の職業として市民の生活を支える水道の仕事を選択肢の1つにしてほしいとの願いもありました。これらを念頭に検討を進めていくなかで、職員から『Out of KidZania』開催のアイデアが寄せられたのです。
―どこに興味を持ちましたか。
西 実際にキッザニアを見学しましたが、建物や道具などはこどもに合わせて実物の3分の2の大きさでつくられており、まさに「こどもが主役の街」という世界観が体現されていました。また、こどもには一人の大人として接して、社会を経験してもらうという考え方やこども目線に立ったプログラムに感銘を受けました。同じような機会を水道局でも提供したいとの想いから『Out of KidZania』の開催を決め、キッザニアを運営するKCJ GROUPとともに準備を進めました。
―実施までには、どのような準備を進めたのですか。
武藤 体験イベントは、実際に職員が使う水道技術研修所を利用し、こどもたちは福岡市水道局のキッズ職員として講義や実験のほか、水道管をつないだり漏水調査をしたりと、水道局の実際の仕事を1日かけて体験してもらうことにしました。KCJ GROUPには、プログラムの対象年齢や難易度の設定、こどもへのサポートのコツなど詳細に助言をもらいながら、当日のシナリオを策定。令和4年10月8、9日の両日、小学4~6年生を各50人ずつ募集して実施しました。
「将来、水道局で働きたい」と言ってくれた子も
―実施した効果はいかがでしたか。
西 目を輝かせていたこどもたちの姿が印象的で、アンケートでもほぼ100%のこどもが「楽しかった」と答えてくれました。イベントの最後には、こどもたちにキッズ職員として1日仕事をして気づいたことを発表してもらったのですが、水道事業に対する理解を深めてくれたことがよく伝わってきました。なかには、「将来、水道局で働きたい」と言ってくれたこどもまでいて、我々も感動しました。
武藤 参加した職員からも、仕事のモチベーションが上がったとの声が届いており、組織運営上の効果もあったと感じています。この取り組みに手ごたえを感じ、当市ではこどもへの施策を強化すべく、水道に関する新たなリーフレットを作成して、全小学生に配布しました。今後、再びKCJ GROUPと連携することも検討しています。
支援企業の視点
こどもたちによる職業体験は、自治体事業の持続的運営にも有効

―自治体の業務を職業体験として実施することもあるのですね。
実施例はまだ多くありませんが、住民への啓発活動の一環として検討する自治体は増えています。福岡市水道局が実施したように、丸1日かけてじっくりと行うタイプの『Out of KidZania』であれば、ひとつの事業に対する理解が深まるので、教育価値も高いです。未来の地域経営の担い手であるこどもたちによる職業体験は、自治体事業の持続的運営を考えるうえで非常に有効な手段だと思います。また、仕事を教える側も新たな気づきやモチベーションを得られることが多いため、職員の研修事業の一環として実施するケースもあります。
―サービスの特徴はなんですか。
「こどもが興味を持つだろうか」と大人が考えるような仕事でも、キッザニアのノウハウを活かしてこどもたちが楽しく学べる内容に仕上げていける点です。イベント当日には、こども6~8人で構成される班にキッザニアでアクティビティを運営するスーパーバイザーが1人ずつ入り、こどもの気づきを引き出すプロとして体験のサポートをします。体験して終わりではなく、気づきをアウトプットするところまでを職業体験とするのも『Out of KidZania』の特徴です。
―自治体へのメッセージをお願いします。
外から見えにくいけれど市民生活には欠かせない重要な仕事をこどもたちに知ってもらうことができます。第一次産業やキッザニア館内では使えない道具を使う体験もできるのは『Out of KidZania』ならではです。関心があるみなさんは、ぜひお問い合わせください。
設立 | 平成16年9月 |
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資本金 | 5,000万円 |
事業内容 | こどもの職業・社会体験施設「キッザニア」の企画、運営、開発 |
URL | https://www.kidzania.jp/ |
お問い合わせメールアドレス | outofkidzania@kidzania.jp |
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