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先進事例2022.06.22
民間事業者への包括業務委託①

行政のコスト抑制とサービス向上を、同時に達成する包括業務委託の効果

[提供] シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社
行政のコスト抑制とサービス向上を、同時に達成する包括業務委託の効果
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シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社
シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社

和歌山県白浜町の取り組み

民間事業者への包括業務委託①

行政のコスト抑制とサービス向上を、同時に達成する包括業務委託の効果

白浜町 町長 井澗 誠
[提供] シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社

※下記は自治体通信 Vol.39(2022年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

財政悪化やそれに伴う人員不足が深刻ななか、業務の多様化・複雑化は進み、持続的な行政運営に課題を感じ始めている自治体は少なくない。コロナ禍の影響で、自治体財政の悪化はさらに進んでいる。そうしたなか、自治体の多様な業務を一括して民間事業者に委託することで、行政サービスのコスト削減と品質維持を図る動きがある。そうした自治体の一つである白浜町(和歌山県)町長の井澗氏に、取り組みの内容とその成果を聞いた。

[白浜町] ■人口:2万591人(令和4年3月末現在) ■世帯数:1万1,042世帯(令和4年3月末現在) ■予算規模:206億2,440万円(令和4年度当初) ■面積:200.98km2 ■概要:和歌山県の南部に位置し、大きくは紀伊水道に面した半島地域、富田川下流域および日置川流域に分かれる。北西の半島部に市街地が形成され、南部では海岸地域まで山地がせまり、海岸、河川流域、谷間部に集落が点在している。町域には、吉野熊野国立公園、大塔日置川県立自然公園が含まれるなど、海・山・川にわたる豊かな自然環境に恵まれている。
白浜町
町長
井澗 誠 いたに まこと

個別委託では効果は限定的。より大胆な民間活用が必要に

―白浜町が包括業務委託を行うに至った経緯を教えてください。

 観光業が主力産業となっている当町は、温浴施設や海岸・公園といった公共施設の管理を直営で行っていました。しかし、平成18年に旧日置川町と合併し、管理対象が増加したことで、行財政運営のより一層の効率化が求められることになりました。そこで平成18年以降、15年間で95人の正職員削減を図る一方、5年ごとに3度策定した「財政健全化プラン」では、民間事業者への業務委託を重要施策と位置づけ、施設ごとに運営を民間事業者へ委託してきました。

―民間事業者への業務委託の効果はいかがでしたか。

 残念ながら施設単位での民間委託の効果は限定的で、人口減少や高齢化が進展するなかで、さらなる行財政運営の効率化が迫られる状況でした。また、正職員を削減する一方、多様化・複雑化する業務への対応から臨時職員の雇用が増加したことで、その人事管理の事務負担は逆に増している状況でした。正職員が行う臨時職員への指導研修の時間も減少した結果、行政サービスの質が低下して住民からお叱りを受けるケースも出てきたのです。そこで当町では、これらの課題を総合的に解決するために、案件ごとに個別で業務を委託するのではなく、包括的に行うことで業務委託の効果を最大化し、より大胆に民間のノウハウを活用する必要があると考えたのです。

―実際、包括業務委託はどのように進めたのですか。

 事業者選定にあたっては、当町の設計額以下での受注を前提に、他の自治体での行政サービスにおける受注実績を重視しました。まずは、平成30年度に「学校用務員業務」「保育園等事務業務」など5業務、業務人員9人分の包括委託を実施。その後、さらなる改革推進のため、令和2年度からは「公園・海岸・道路等環境整備等業務」「浴場施設受付対応」「給食調理等業務」といった9業務、業務人員89人分の追加的な包括委託も決めました。その際のプロポーザルでは、「全臨時職員等の継続雇用」や「転籍時の有給休暇5日付与」など仕様書以上の提案をしてくれたシダックス大新東ヒューマンサービスへの委託を決定。令和4年度からは、合理化効果をさらに高めるため、14業務すべての発注を同社に統合しています。

業務の垣根を越えた作業管理。期待以上の効果も

―包括業務委託によって、どのような効果を実感していますか。

 当町の顔と言っていい白良浜や温浴施設をいかにきれいな状態に保てるかは、観光客や町民の満足度に直結しますが、いずれの施設も利用者からの評判は大変に良いです。温浴施設の常連客からは、「直営時より対応が良くなり、施設内もきれいになった」という声を多数いただくようになりました。人材育成や研修体制も強化されており、業務効率や従業員同士のチームワークが非常に良くなったと感じています。直営時、所管課が異なる施設でそれぞれが行っていた清掃業務は、担当の垣根を越えてトータルに作業管理が行き渡っているようです。かつては転倒などによる怪我が発生していた給食調理現場では、安全衛生に関する意識が大きく高まるなど、期待以上の効果に大変満足しています。

―今後の行政運営の方針を聞かせてください。

 引き続き、「必ずしも正職員が担当しなくてもよい業務は民間へ委託する」という考えのもと、さらなる民間委託が可能な業務の選定に努めていきます。それにより、これまでのやり方では難しかった行政コストのさらなる抑制を図るとともに、人的資源の効率的な配置を行い、住民サービスの維持・向上につなげていきたいと考えています。


支援企業の視点

民間事業者への包括業務委託②

包括業務委託を成功に導くカギは、事業領域と専門性による事業

シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社 代表取締役社長 山田 智治
[提供] シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社

民間事業者への包括業務委託によって、行政のコスト低減とサービス向上を同時に実現した白浜町。この取り組みを支援してきたのが、シダックス大新東ヒューマンサービスである。自治体は包括業務委託でどのような効果が得られるのか。同社代表の山田氏に聞いた。

シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社
代表取締役社長
山田 智治 やまだ ともはる

同じ課題を抱える7自治体と、包括業務委託契約を締結

―行政の持続的な運営に向けて、現在自治体はどのような課題を抱えていますか。

 サウンディングで当社が相談を受けた白浜町のケースでは、大きく3つの課題をもたれていました。1つ目は財政健全化です。そのために民間への業務委託は早くから着手されていましたが、業務単位での個別委託では、十分な財政健全化を実現できていない状況でした。2つ目は、市町村合併による公共施設の増加への対応。そして3つ目が、正職員の削減に伴う臨時職員の増加です。これによる、労務管理といった正職員の負担増加に苦慮されていたのです。そこで当社が包括業務委託を提案いたしました。こうした事情を抱える自治体は少なくなく、すでに当社では同じような課題を抱える全国7自治体との間で包括業務委託契約を締結しています。

―包括業務委託で、自治体はどのような効果を得られますか。

 まずは、行政コストの低減が図れます。個別委託では、事業者は個々の事業で収益を確保する必要がありますが、包括業務委託なら必ずしもその必要はなく、「別の事業と組み合わせると収益を確保できる」といったビジネスモデルがとれます。管理の縦割りを排し、業務の枠を越えた人材の有効活用ができ、マルチタスクによる少人数での業務運営が可能になります。複数の業務を手がけることは、雇用の安定化につながり、働く側は労働時間が増えることによるスキルと収入のアップといったメリットがあります。労働者のエンゲージメントが高まれば、サービス品質の向上も期待できます。さらに当社の場合、エリアマネージャーが常駐する営業所を現地に設置し、コンプライアンスや接遇マナー、衛生・安全管理といった各種研修を充実させるだけでなく、本社サポートによる専門性教育にも注力。昨今は、動画研修やリモート研修も導入しています。住民サービス品質の向上を図るとともに、不測の事態への迅速な対応力も高めています。

30年以上におよぶ歴史。約380自治体での受託実績

―自治体が事業者を選定する際のポイントはなんでしょう。

 1つは、事業領域の広さです。たとえば、総合サービス業を標榜する当社の場合、「500の仕事」というキーワードを掲げていますが、そのうちの約8割が自治体関連業務です。「学校給食事業」「学童保育事業」、それ以外のあらゆる自治体業務を包含する「社会サービス事業」という3つの事業を展開しています。この3事業それぞれで業界トップクラスのシェアを誇る企業は、当社をおいてほかにないと自負しています。

 そしてもう1つのポイントは、自治体業務に対する理解度の高さです。行政サービスの受託に際しては、業務自体への知見はもとより、たびたび変わる法令を熟知し、的確に対応していく必要があります。30年以上におよぶ自治体からの業務受託の歴史がある当社では、約380自治体からの業務受託実績で培った専門性を活かし、行政のあらゆるニーズに応えることができます。

―今後の自治体への支援方針を聞かせてください。

 抱える課題や背景は自治体によってさまざまです。当社では、包括業務委託に際しては、それぞれの自治体の課題へ丁寧に向き合い、最適な解決策の提案に努めていきます。また、業務運営にあたっては、地域の雇用創出と地元企業の活用を通じて、地域経済の活性化に貢献する方針を大切にしています。行政の持続的運営に課題を抱える自治体においては、ぜひ包括業務委託を1つの手段として検討してみてください。

山田 智治(やまだ ともはる)プロフィール
平成11年3月に大新東株式会社に入社。関西支店長、社会サービス事業本部長などを経て、令和3年6月より現職。

シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社
設立 昭和61年11月
資本金 1億円
売上高 326億3,100万円(令和3年3月期)
従業員数 1万8,714人(令和4年3月現在)
事業内容 社会サービス事業、地域活性化事業、学童保育事業、学校給食事業
URL https://www.shidax.co.jp/corporate/group/shidax-daishinto-human-service/
お問い合わせ電話番号 03-6731-9111
(担当:及川、平日 9:00〜18:00、年末年始を除く)
シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社
シダックス大新東ヒューマンサービス株式会社
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