
北海道旭川市/大阪府高槻市の取り組み
定量データに基づく業務改善策①
生産性向上への新たな道筋、自治体間の「業務量比較」という手法
高槻市 総合戦略部 みらい創生室 主査 増田 瞬
※下記は自治体通信 Vol.29(2021年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
いまや多くの自治体が職員の業務効率改善に課題を抱えるなか、業務改革の第一歩として、業務の可視化を目的とした「業務量調査」に着手する自治体が増えている。旭川市(北海道)や高槻市(大阪府)もそうした自治体のひとつだ。この両自治体は今回、互いの業務量調査の結果を比較・分析することで、業務改善への課題を客観的に抽出する新しい取り組みを実施した。その効果について、両市の担当者に聞いた。


業務改善に効果的なのは、全庁規模の統一的業務量調査
―両市が「業務量調査」を実施した背景を教えてください。
青葉 当市では、平成12年の中核市移行後、職員数の削減をはじめ、各種行財政改革を実施してきました。しかし、少子化が進み、業務も複雑化・多様化するなか、現在のやり方や人海戦術は早晩立ち行かなくなるという危機感が。そこで、抜本的な改革の第一歩として、昨年9月から現状把握のため全庁的な業務量調査を実施しました。
増田 当市でも平成29年度に「みらいのための経営革新」に向けた改革方針を打ち出し、さまざまな行財政改革に取り組んできました。そうしたなか、昨年8月に連携協定を結んだコニカミノルタから、庁内の業務改善には全庁規模の統一的な業務量調査がもっとも効果的だとの提案を受けたのです。
―実際に、どのような調査を行ったのですか。
青葉 まず、部署ごとに条例で定められた事務分掌をセットします。そのうえで、事務分掌に連なるすべての業務について、全職員を対象に、具体的なフローやかけている時間などを記入してもらうことで、業務ごとの流れや人的コストが客観的に可視化されるのです。
増田 さらに、それらのデータは生産性向上に対するコニカミノルタの知見によって全庁統一の基準で分析され、業務時間の削減効果による優先順位づけの手掛かりとして、業務改善につながる貴重なデータが算出されていくのです。
自治体間連携で解決する、という道が開かれた
―全庁規模の業務量調査を実施した効果はいかがでしたか。
増田 これまで感覚的に捉えられてきた業務の負担感や時間のかけ方が定量的に可視化されたのは、大きな効果でした。これにより、改善効果の高い業務を優先順位づけできるようになりました。また、職員が担うべき「コア業務」と職員でなくてもできる「ノンコア業務」という区別は、これまで各職場では意識していたものですが、市の業務全般にわたって「見える化」されたのは初めてなので、今後の業務改善のポイントになるかと。ノンコア業務の負担状況が、各部署のチーム単位で細分化して把握できたことは大きな収穫でした。
青葉 業務量調査では、業務ごとに紙の使用量や電子化の割合も調べ、業務量との相関関係が浮かび上がってきました。ペーパーレス化は業務改善にもつながることがわかり、電子決裁システムやそのほかDX施策の重要性も認識できました。
―今回は両市で、調査結果の相互比較も行ったようですね。
青葉 はい。同規模の自治体であれば、業務内容も業務を取り巻く状況も共通部分が多いので、比較によって業務改善のヒントが得られるのではないかと。コニカミノルタの協力で比較分析を行いました。結果、両自治体とも全庁にわたる庶務事務の業務負担が重く、高槻市に比べノンコア業務に正規職員が多く配置されている実態も明らかになりました。
増田 庶務事務のなかでも、特に照会・回答業務は総量も多いため、大きな改善効果が期待できます。また、各課が独自の様式で実施していたものを共通化するという業務改善の道筋も見えました。
両自治体間に共通した業務や事業でも、一方が多くの時間を費やしているといったこともあり、双方の取り組み方などを参考に、業務改善を図れるのではないかと期待しています。共通課題に対して、自治体間で連携して解決するという道が開かれたのは、今回の取り組みの大きな意義ですね。

広島県福山市 福岡県久留米市×福岡銀行の取り組み
定量データに基づく業務改善策②
生産性向上への新たな道筋、自治体間の「業務量比較」という手法
久留米市 総務部人事厚生課 課長補佐 中村 健一郎
株式会社福岡銀行 地域共創部 公務金融法人室 主任調査役 津川 健
※下記は自治体通信 Vol.29(2021年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
前ページでは、業務量調査の結果を相互比較しながら行政改革を進める旭川市と高槻市の取り組みを紹介した。ここでは、教育・保育現場を対象に含めて業務量調査を実施する福山市(広島県)と、指定金融機関とともに職員の業務効率化に取り組む久留米市(福岡県)の事例を伝える。

―福山市が業務量調査の実施を決めた理由はなんでしょう。
限られた予算や人員で住民サービスの質を維持していくために、これまでも行財政改革を積み重ねてきましたが、一方で職員の業務を抜本的に見直す必要があるとの認識がありました。そんななか、コニカミノルタから、全庁的に業務を可視化する提案を受けました。そこで当市では、事務職と合わせて、長時間勤務の縮減に向けて取り組んでいる小・中・義務教育学校や幼稚園、保育所、こども園といった教育・保育現場での業務量調査の実施も決めました。
―調査には、なにを期待していますか。
今後の業務改善の成果を最大化させるために、施策の優先順位をどうつけるか。そのための基礎データが得られるのではないかと期待しています。デジタル化以外にも、業務フローの見直しといった、すぐにでも着手できる施策も見つかるかもしれません。同時に、調査自体が日頃の業務を振り返る機会になり、業務の目的や意義に対する職員の意識改革にもつながるのではないかと考えています。コニカミノルタがもつ業務改善のノウハウも今後、有意義な分析に活かされるものと期待しています。


―久留米市で業務量調査を始めた経緯を教えてください。
中村 市民ニーズの多様化・複雑化が進むなか、職員の時間外勤務縮減が喫緊の課題でした。従来も事務のICT化や働き方改革を推進していましたが、部分的な取り組みにとどまっていました。こうした折に、当市の指定金融機関である福岡銀行から、コニカミノルタを紹介され、3者による連携協定を令和2年12月に締結。全庁的な業務量調査を開始しました。
―どのような成果を期待していますか。
中村 調査結果をもとに、職員負担の大きな軽減が見込める業務を抽出し、費用対効果の高いICTツールの活用を検討できる点に期待しています。また、市民サービスの向上を目指し、今後は電子申請の拡大も検討していきますが、手数料支払いのキャッシュレス化の検討も含め、福岡銀行の協力も得ながら事務の見直しを進めていきます。これが、時間外勤務の縮減にもつながるものと期待しています。
津川 自治体における業務改善は、職員の生産性向上と住民サービスの維持・向上を同時に実現できる取り組みです。地域住民や事業者へのサービスが向上し、自治体、金融機関それぞれの業務効率化が実現できるよう、連携していきます。
札幌市 × コニカミノルタ 行政改革対談
業務量調査結果を判断材料に、機動的で効果の高い行政改革を
コニカミノルタ株式会社 自治体DX推進部長 兼 関西支社長 別府 幹雄
※下記は自治体通信 Vol.29(2021年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
前ページまでは、コニカミノルタの支援のもと、業務量調査をベースとした行政改革を進める4自治体の事例を紹介した。ここでは、同社がはじめて行政改革を支援した自治体である札幌市(北海道)の満保氏とコニカミノルタの別府氏に取材。業務量調査で得られた成果や今後の自治体支援方針を各氏に聞いた。


経験や憶測に頼ることなく、業務の全体最適化を図れる
―札幌市は業務量調査からどのような成果を得ていますか。
満保 属人的な経験や憶測に頼ることなく、客観的な根拠に基づいて業務の全体最適化を図れるようになったことが最大の成果です。当市では今後、一部の手続き業務を請け負う「行政事務センター」を民間企業に設立してもらい、年度途中であっても機動的に業務を委託できる仕組みづくりを検討しています。業務量調査の結果があれば、「どの業務を委託すれば大きな効果を得られるか」「そもそもRPAで自動化したほうが効率的ではないか」といった判断を客観的かつ即時に行えるため、費用対効果の高い改善を機動的に実践できると考えています。
別府 業務の外部委託や自動化、業務プロセスの見直し、いずれを行う際にも、業務量調査の結果はすぐれた判断材料となります。人数の限られる行政改革担当者が全庁的な改革を進めていくに当たっては、業務量調査は現状の課題を把握し、より効果的で具体的な施策につなげるための基礎となるのです。
―行政改革をめぐる今後の方針を聞かせてください。
満保 引き続き、他自治体の改善事例を参考にしたり、新たなデジタルソリューションを導入したりして、職員の業務改善をさらに市民サービスの向上にもつなげていきたいですね。業務量調査結果に基づき適切なソリューションを取り入れられれば、「職員の負担軽減」「市民サービスの向上」「行政コストの削減」を同時に実現することも可能だと考えています。コニカミノルタには、こうしたソリューションの提案も含め、「行革のコンシェルジュ」としての支援に期待しています。
別府 ぜひ、一緒に実現したいですね。札幌市からスタートした当社の自治体に対する行政改革支援は、令和3年3月現在、約50団体に広がり、業務量調査の結果や改善事例を蓄積しています。こうした豊富なデータにくわえ、当社が長年培ってきた生産品質改善のノウハウを活かし、より多くの自治体の行政改革を支援していきます。
コニカミノルタは、行政コンサルティング会社のPublic dots & Company(PdC)とも連携し、自治体への支援の幅を広げる。「パブリック人材(※)による官民共創」を理念に掲げるPdCによると、行政改革を成功させるポイントは「業務の可視化」「BPR」「職員の意識改革」の3つ。両社の連携により、3つのポイントを押さえた行政改革を支援していく。
※パブリック人材:官民双方の知見を合わせもち、事業の推進を行える人材
設立 | 昭和11年12月 |
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資本金 | 375億1,900万円 |
売上高 | 9,961億円(令和2年3月期:連結) |
従業員数 | 4万3,961人(令和2年3月現在:連結) |
事業内容 | オフィス事業、プロフェッショナルプリント事業、ヘルスケア事業、産業用材料・機器事業 |
URL | https://www.konicaminolta.com/jp-ja/ |
お問い合わせ電話番号 | デジタルワークプレイス事業本部 自治体DX推進部 事業管理G 西澤 英一郎 070-2163-1681(平日9:00〜17:00) |
お問い合わせメールアドレス | E.Nishi@konicaminolta.com |
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