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スマートシティにおけるヘルスケアの展望 Vol.3 ~ プラットフォームの概要とサービス設計時の要点 ~

これまで、スマートシティの様々な取り組みについて、高齢化進行による医療費高騰や、COVID-19による住民の健康意識の高まりなどといった直近の社会情勢から、多くの自治体が解決方法を模索しているヘルスケア領域にフォーカスを充てて論じました。 特に前章では、スマートシティにおけるヘルスケアサービスがもたらす価値や、それを支えるステークホルダーについて整理しました。

これらを踏まえ、本編ではスマートシティにおける都市OSを構成する一要素である、ヘルスケアサービス提供におけるプラットフォームの構造や機能、またその価値最大化のためのサービス設計時のポイントについて述べていきます。

1. スマートシティにおけるヘルスケアサービスプラットフォームの構造・機能

前編でも整理した通り、スマートシティにおけるヘルスケアサービスにおいては、多数のステークホルダーを双方向、かつタイムリーにつなげるために、プラットフォームが重要な役割を担うことになります。
ここではスマートシティにおけるヘルスケアサービスを支えるプラットフォームの構造や機能について、具体例を交えながらご紹介していきます。

下図は、※”Health Cloud”というプラットフォームをベースに、自治体内外の各関連システムと連携を行っているケースを表しています。

※Health Cloud: Salesforce社とデロイト トーマツ グループが提供する、業界特化型のクラウド型プラットフォームサービスのこと


 

本ケースにおいて、自治体は医療機関より連携された住民のレセプトデータ(EMR/EHR)を管理していると同時に、住民(患者)が保有するウェアラブルデバイスより提供されるバイタル情報(PHR)や、”Health Cloudが提供するアプリやWebページ”等を通じて登録されたセルフケア、治療、運動、栄養などの生活情報を管理しています。
これらの自治体が持つヘルスケアデータを活用することで、自治体は住民(患者)に対して、ライフスタイル別に健康増進のイベントやコミュニティプログラムのお知らせ、オンラインカウンセリングなどのサービス提供、適切な介護・介護予防サービスの提案・通知をタイムリーに行うことができます。

また、自治体でヘルスケアデータを一元化することにより、災害などの緊急時のBCP対策の一環としても役立てることが可能です。 例えば、災害時の活用例として、住民の服薬情報や病歴などを一元管理しておくことで、避難所ごとに必要な薬剤や医療リソースの配分が最適化でき、かつ住民の病歴情報に応じた適切な医療サービスの提供が実現可能となります。

さらに、住民のヘルスケアデータをヘルスケア関連企業に提供し、そのリターンとしてデータから読み解ける高度なインサイトのフィードバックを受けるほか、別サービスの形で自治体や住民に還元してもらう仕組みを作ることも可能です。
その他、イノベーションプラットフォームとして、ヘルスケア関連企業や3rd Partyとしてのテクノロジー企業とのコラボレーションにより、自治体から提供されたヘルスケアデータを研究や製品の進歩に活用するなど、プラットフォーム自体の拡張性にも優れているため、様々な新しいバリューチェーンが創造できます。

“Health Cloud”のような一定程度完成されたプラットフォームを活用するケースのみならず、スマートシティのヘルスケアサービスにおけるプラットフォームの選定・導入に際しては、下記3つのポイントを考慮する必要があると考えます。

・ヘルスケア関連制度や、ヘルスケア関連データの取り扱いに配慮があるか
・国を含む各ステークホルダーのICT動向と整合性が取られているか、または今後取られるケイパビリティがあるか
・3省2ガイドライン(厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」経済産業省・総務省の「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」)で定められているシステムのセキュリティ基準を満たしているか

このようなデジタル分野、とりわけヘルスケア関連サービスへの専門的知見・経験を背景に、各種情報の提供、民間事業者との調整や導入サービス等にかかるアドバイスの提供等にて地方公共団体をサポートする専門人材の活用も重要なポイントです。

プロジェクト初動/初期の段階からフィージビリティのあるサービス要件を定義するためにも、このようなアドバイザー/アーキテクト等の専門人材の選定・巻き込みは、プロジェクトの早い段階からの実施が推奨されています。
出典)スマートシティガイドブック(概要)

ここで留意しなければならない点として、このようなプラットフォームをはじめとする都市OSの導入そのものが目的化してしまわないように気を付けなければならない点が挙げられます。
よくあるケースとして、本来目指している『利用者の利便性向上』が二の次となってしまい、せっかくサービスの導入が行われても、利用者が使い方を理解しづらいユーザインタフェースのままサービスが提供開始となったり、利用者の声を踏まえた改善等を行わず初期リリースのまま維持だけがなされていたり、周知広報等を効果的に実施できず、構築・導入したにも関わらずあまり利用されていない例などが散見されます。

こういった事態を防ぐためにも、都市OSやプラットフォームなどといった単に新たな技術を導入するのではなく、都市マネジメントの側面から、デジタル技術やデータも活用して、利用者目線で業務の効率化・改善等を行うケイパビリティを有する専門人材をアドバイザーとして巻き込み、中長期的なサービス展開を見据えた二人三脚体制を構築しておくことも重要と考えます。

2. ヘルスケアサービス設計時のポイント

ここまでスマートシティにおけるヘルスケアサービスを実現する手段として、プラットフォームの構造や機能、選定ポイント等を整理しました。 ここではそもそもの目的部分、すなわちヘルスケアサービスの提供により、どのように住民の利便性や健康促進、” Well-Being”の向上が達成のための要点について述べます。

さて、スマートシティにおけるヘルスケアサービスとはどのようなものが考えられるでしょうか。

当然のことながら、目的によって実装すべきヘルスケアサービスの姿は異なってきます。
例えば、住民の健康促進を目的とした場合は、歩数等の活動量に応じた健康ポイント付与、住民の健康・生活情報の分析による疾病予防・予測、保健サービスの効率化等が考えられます。

医療・介護の質向上・効率化を実現する場合は、電子カルテを含む診療・検査情報の共有、搬送先情報の共有による救急搬送の迅速化、ライフログ等を用いた高齢者の見守り、日常の身体情報をモニター/アラートすることによる疾病の重症化予防、遠隔医療の実現による容易な医療アクセスの実現、医療・介護データ分析による政策立案への活用等が様々なパターンが考えられます。
これらを分解すると、健康・医療・介護を含めたヘルスケアサービスは、データ・機能・サービス提供先の掛け合わせで構成されると考えることができます。

下図は、データ・機能・サービス提供先における構成要素をさらに分解し、整理したものです。


出展)スマートシティにおけるヘルスケア|ヘルスケア|デロイト トーマツ グループ|Deloitte


前章でも述べたように、都市OSの一部となるプラットフォーム自体はその拡張性や自由度も高いものが多く、様々なサービス提供の目的に対応することができます。それゆえに、特にヘルスケアサービスでは、サービスのスキーム設計がより肝要となるといえます。
スキーム設計時では取得する情報・データの利用目的と範囲の明確化が論点となるケースが多く、自治体が現在把握できるデータの種類や、サービス提供にあたり今後新たに収集する必要があるデータはどのようなものがあるのか、等を整理する必要があります。

サービス提供やデータ収集の必要性や目的を明確にするため、地域の目指す方向性や課題、長所を踏まえ、市民をはじめとする各ステークホルダーのニーズ収集をこまめに、かつ柔軟に行える準備をしておくことも望まれます。
こうしたコミュニケーションを通じ、診療情報や健診結果等の要配慮個人情報を扱うことが多いヘルスケアサービスの展開時に、個人情報の取得についての同意等のスムーズな取得につながる関係を醸成できることも期待できます。

3. おわりに

さて、本テーマでは3回にわたり、スマートシティ戦略におけるヘルスケアサービスについてお届けしてきました。

スマートシティにおけるヘルスケアの展望【Vol.1 ~ 自治体に期待されること ~】

スマートシティにおけるヘルスケアの展望【Vol.2 ~提供される価値と運営上の留意点~】

スマートシティ戦略においてヘルスケアサービスに取り組む際は、これまでご紹介した各種留意点に配慮しながら、事業を推進して頂けたらと思います。

また、デロイト トーマツ グループでは、各領域において内部に実務経験豊富な専門家を有しており、地域・自治体・医療機関が抱える課題に応じてチームを構成し、課題に取り組むことができる業務体制を整えています。 スマートシティにおける有効なヘルスケアサービスの実現に向けた戦略立案、課題対応等お悩みがありましたら、ぜひ気軽にご相談下さい。

<本サービスに関する問い合わせ先>

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
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