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防災分野のDX推進を目指して ―総合防災ソリューションのご紹介―

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日本は災害大国といわれますが、近年、災害は激甚化しており、例えば水害の被害額をみても過去10年間で10倍以上に増加しています (※)。また、日本国外へ目を向けても気候変動の影響に備える「適応」という文脈から、防災・減災への対応は喫緊の課題となっています。 デロイト トーマツ グループでは、スマートシティを推進するために独自の都市OSである 「City Connect」を開発しており、City Connect上に防災に関するソリューション群である「総合防災ソリューション」を開発しています。 総合防災ソリューションは発災時だけではなく、「平時」、「発災時」、「避難時」、「救助・復旧時」の各フェーズにおいて自治体や市民、保険会社や病院といった各主体が活用可能なソリューションを準備しており、複数の自治体と連携して実証実験を進めています。今回は、総合防災ソリューションとその実証の様子についてご紹介致します。

※国土交通省:令和元年東日本台風の発生した令和元年の水害被害額が統計開始以来最大に~令和元年の水害被害額を公表~
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001359046.pdf


平時から発災時、救助・復旧時までカバーする総合防災ソリューション

財政の逼迫や人口減少、少子高齢化の進行、自然災害対策、過疎地区における市民サービスの維持など、日本の都市は多くの課題を抱えており、そうした課題の解消または軽減を目指して「スマートシティ化」の取り組みが盛んに行われています。

スマートシティとは、散在する情報を結び付けることで都市(地域)の現状を把握し、ハードとソフトのインフラを有機的につなぎ地域の課題解決を図ることであり、都市で暮らす人々の生活の質を向上させる取り組みといえます。そして技術的な観点からスマートシティの実現を可能にするものが都市OSです。デロイト トーマツ独自の都市OSであるCity Connectは、エンジニアでなくてもノーコードで2D/3Dの双方でダッシュボードを構築することができたり、複数の開発言語に対応したソフトウェアディベロップメントキットを提供したりすることで外部機器やアプリケーションとの接続を容易にします。

City Connectの基本機能を用いることで、迅速にアプリケーションを開発が可能で、City Connect上で開発したアプリケーションを用いて防災分野においては以下のサービスを開発しています。各サービスは機能的には準備ができているものですが、製品としての完成度を高めるべく、自治体の方々と現在、実証実験を進めています。

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注)緑は平時・発災時の双方で、青は主に発災時の利用を想定したサービス。自治体の状況に応じてテーラーメードに組合わせたサービス提供を想定
出所)「総合防災ソリューションのサービス一覧」
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/public-sector/gv/jp-gv-city-connect-disaster-prevention.pdf

避難所管理システムの実証実験

2021年11月、東京都三鷹市において上記の総合防災ソリューションの中からA.自治体向けダッシュボード、B.住民向けダッシュボード、K.避難所管理システムを用いての実証実験を行いました。三鷹市の避難所管理の現状としては、避難者は、発災時に避難所にて氏名、住所、要配慮情報やアレルギーの有無等を避難者カードに手書きで記入し、避難所の管理者が収容人数と世帯数のみ災害情報システムに手入力することで避難所から市災害対策本部に情報連携するというものでした。

現状では、紙の避難者カードに記入するため、用紙の事前印刷や目視での確認・集計が煩雑で多くの人的工数が必要となり、リアルタイムでの収容者情報の把握が困難なうえ、避難者台帳や避難者名簿作成時の転記ミスも起こりやすいという課題もありました。また、避難所の収容者数等を管理する既存の三鷹市災害情報システムは市職員だけでなく、消防団員等も使用するため、折角避難者カードで多くの情報を集めても災害情報システムに個人情報を登録できず、市の災害対策本部に伝えることが難しいという課題もありました。

そこで今回の実証においては、スマートフォンのアプリとチャットボットを開発し、避難者カードの情報をアプリでの事前入力または避難所にてチャットボットを用いた音声での入力に置き換えました。それにより、避難所の稼働状況の可視化や避難者リストの作成がリアルタイムに実行可能となり、個人情報についても容易かつ安全に連携することができるようになりました。また、QRコード、顔認証、声紋認証のいずれかにより避難者を紐づけ、体温、心拍、脈拍、ストレス度といったバイタル情報をカメラから取得することで、避難所における健康管理を行い、管理画面で容易に確認できるようにしました。

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今後のソリューション開発の展望

今回の実証の結果として避難者台帳や避難者名簿作成に必要な既存の人的工数を70%以上削減できることが明らかになりました。それに加えて、個々人の健康状態やストレス度を把握できるようになることで、健康状態に問題がある方への個別対応や避難所全体のストレス度を可視化し、避難所運営の効果検証への応用が可能となります。そして今後は住民向けダッシュボードを改良することで自宅避難者の安否確認や避難状況の親族や支援者への連携、属性に応じたプッシュ型の情報通知機能の追加開発を進めており、ソリューションのさらなる利便性向上を計画しています。例えば、国土交通省ではマイ・タイムラインの普及とその電子化を進めていますが、住民向けダッシュボードの電子版マイ・タイムラインとの連携がそのひとつです。

マイ・タイムラインとは住民一人ひとりのタイムライン(防災行動計画)であり、例えば台風等の接近による大雨によって河川の水位が上昇する時に、どのような状況になったらどのような行動をとると事前に整理するものです。その情報を住民向けダッシュボードに入れることで事前に設定した特定の状況になった際に本人に避難を促すプッシュ型の通知を送信するだけではなく、事前に設定した親族等にも通知を共有することで別居親族から避難を促してもらったり、近隣住民の避難状況を可視化し共有することで、避難を促したりすることが可能となります。

住民向けダッシュボードの機能拡張についても現在上記とは別の自治体と実証を進めており、来年度の製品化を目指しています。避難所の管理については自治体の数ある業務の中でもDX化が遅れている分野であり、災害の混乱している状況であるからこそ、DXによる業務効率が必要な分野であるともいえます。デロイト トーマツはCity Connectという最新の都市OSとコンサルティングファームとして長年培った業務改善に関する知見により、防災分野においても自治体の皆様の課題特定及び解決を支援していきます。

<本サービスに関する問い合わせ先>

担当:デロイト トーマツ コンサルティング合同会社P&S ユニット 浜名 弘明
E-mail: hhamana@tohmatsu.co.jp

 

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
設立 1993年4月
資本金 5億円
従業員数 3,656名(2020年6月1日現在)
事業内容 デロイト トーマツ コンサルティングは、さまざまな業界・業種ごとの専門的知識とプロジェクト経験、組織、機能、目的に対応し、特有の課題を解決するケイパビリティを有する、2軸のプロフェッショナルチームによるアプローチによって、複雑に絡み合う経営や、社会課題をダイナミックに解決します。
持続可能な成長とともに、デジタル社会の進展によってますます求められているのは、 業界・業種の垣根さえ取り払う、未来企業の飛躍的な成長です。 私たちはその実現のために仮説検証型のコンサルティングサービスに加え、実験実証型のサービスに取り組む体制を整えています。
URL https://www2.deloitte.com/jp/ja.html
お問い合わせ電話番号 03-5220-8600