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職員育成における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

2019/7/31

職員育成における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

“増え続ける業務と増えない職員”という厳しい環境が常態化するなか、効率的かつ生産性の高い公務遂行を継続するため、職員育成のあり方が各自治体の課題のひとつとなっています。個々の職員に、より能力を発揮してもらい、活躍してもらうためには、どのような育成の取り組みが必要なのか? 事例などを通じて、そのポイントを探りました。

 
【目次】
■「職員育成」の課題とは
■事例①【スペシャル・ジェネラリスト育成】藤枝市(静岡県)
■事例②【年功序列を廃止】箕面市(大阪府)
■事例③【政策立案力の向上】松江市(島根県)

「職員育成」の課題とは

最初に、平成27年に人事院がまとめた「時代の変化を踏まえたこれからの人材育成」(以下、報告書)から、公務員全般の人材育成課題に触れている記述を紹介します。同報告書の副題は「行政官としての矜恃とマネジメント能力の向上を中心に」となっており、地方公務員や自治体職員における人材育成課題と共通するものが多くあるようです(以下、報告書からの引用部分は<>で表記)。

報告書の冒頭部分で、<多くの行政の職場には、上司が部下に課題を与え、指導することや現場を経験させることにより、若手が自ら勉強し、議論しながら経験を積む環境があった>と、これまでの公務員の人材育成のあり方を振り返っています。そして<この環境の中で、職員が行政官としての専門知識・経験を磨き(中略)全体の奉仕者としての使命感に裏打ちされた『行政官としての矜恃』を持つことができていた>と総括し、上司や先輩の厳しい指導のもと、公務のなかで能力が鍛え上げらえていく従来のOJT型人材育成の意義や利点を評価します。

しかし、<昨今、多様な行政課題への対処、定員削減の進行、多様な事情を抱える職員の増加や仕事観の変化等の中で、管理職員は限られた人員で効率的に仕事を処理することが求められ>ており、<人材育成に十分な時間をかけ、若手に仕事を任せて経験を積ませる業務運営ができにくくなってきている>と難しい変化が起きていることを指摘します。

こうした現状について<人材育成の好循環や、若手職員の期間に『行政官としての矜恃』を体得する環境も失われ、人が「育つ」職場環境が失われつつある>と警鐘を鳴らし、<短期的には、このような状況は仕方ないのかもしれない。しかしながら、個々の職員の能力の低下は、やがて、行政という組織全体の崩壊につながりかねない>と深刻な危機感を表明します。

そして、今後の人材育成のあり方について<人材育成を個々の職員や現場任せにせず><個々の職員のキャリア開発と人材育成に必要な職場の風土作りに一層積極的に取り組み、人が「育つ」職場環境を再生していく必要がある>と展望します。

つまり、 上司が厳しい教官となって若手を鍛え上げる従来の育成スタイルから、OJTなどの利点を活かしつつも、研修フォーマットや能力開発メニューを整備し“仕組みで育てる”人材育成の導入が必要であることを、同報告書は示唆しています。

次に、地方自治体において、さまざまな工夫で職員育成を行っている事例を紹介します。

事例①【スペシャル・ジェネラリスト育成】藤枝市(静岡県)

藤枝市(静岡県)は市の長期ビジョンである「新公共経営大綱」のもと、職員の育成を重要施策のひとつに掲げ、職員提案に基づく各種の業務改善や事業推進方法の見直しを推進しています。

職員育成の面では「職員修練道場」「職員寺子屋」など“職員が職員を育てる”仕組みを構築。職員自らが日々の業務の改善を提案する「一人一改善運動」、若手の職員が柔軟な発想で新たな施策や事業を提言して実施も図る「新公共経営プロジェクトチーム」、組織の仕事の進め方の改革を検討する「業務改善隊」「仕事の見直し委員会」などの取り組みを通じて業務改善や事業推進方法の見直しを進めています。

また、情報や知識だけでなく専門分野をいくつか持つ職員「スペシャル・ジェネラリスト」を育成する研修の一環として、自治体法務に関する検定試験を実施しています。地方分権が進む中、職員一人ひとりが専門的な法務知識をもち、適切な行政運営を実施できる職員の育成が目的で、中堅職員に関しては、昇格の際、高得点者を優遇します。

藤枝市は「新・人財育成基本方針」を策定し、「真に市民に役立つ職員」を確実に育成することを目標に掲げ、限られた職員数での行政運営が可能となる効率的で生産性の高い組織体制の構築を目指しています。同市は県内35市町で最少の人口千人当たり4.4人の職員数となっているほか、産業構造が同じで人口10万人以上15万人未満の類似団体では、全国85団体中2番目に少ない職員数となるなど、職員育成の一連の取り組みは効果を出しているようです。

事例

藤枝市の法務検定試験制度を詳しくレポートした記事はコチラから




事例②【年功序列を廃止】箕面市(大阪府)

箕面市(大阪府)は人事・給与制度の“年功序列”を撤廃した構造改革を実施しています。「責任と処遇が一致する」制度に改めることで、組織および職員の活性と人材育成を促進し、住民サービスの一層の向上を図ることが目的です。

新制度実施以前の同市の人事・給与制度は「年齢と処遇が一致する」もので、たとえば入庁9年目の主査より入庁19年目の一般職員の給与のほうが高いという事象が珍しくありませんでした。新しい制度は従来の年功序列とは一線を画し、「頑張る職員が報われる」よう、責任に応じた処遇を得られるものに改革しました。

そのポイントは2つあり、①上位の役職階級との給料の逆転現象を発生させない(責任と処遇が一致する)給料表の導入、②これまでひとつだった給料表を行政職・技能職・専門職と職種に応じて分離する―ということです。

これにより、昇格した職員はその責任に均衡する処遇が得られるようになりました。また、より高い能力の発揮をめざす技能職と専門職の職員は行政職にキャリアパスすることが可能になるような制度改革も実施しました。

そのほか、役職間で差を設けた管理職手当への改定や、特殊勤務手当は基本的に“通常業務”とみなして全廃し、“特別な頑張り”に応じて勤勉手当で報いる成績加算の運用を開始し、住居手当の見直しや民間企業の一般的な退職金の考え方にならった退職手当の改正なども実施しました。

同市の過去10年の人口増加率は大阪府内トップ。透明性と納得性の高い給与制度の導入により組織活性が促進されていることが住民サービスの向上につながる施策の推進を活性化し、人口増に結びついている側面もあるのかもしれません。

事例③【政策立案力の向上】松江市(島根県)

松江市(島根県)は行政情報の収集に力を入れ、職員個々の政策立案力向上を促進する取り組みの一環として、利便性の高い行財政専門情報サービスを活用しています。

LGWAN(自治体総合ネットワーク)に対応し、インターネット接続環境があればPC・スマホ・タブレットなど端末を選ばずいつでもどこでも手軽にアクセスできる行財政専門情報サービスを利用しているもので、全国の新聞社と大手通信社が情報を提供しています。

当初は市内で購読できるすべての新聞を購読し、同市に関連がありそうな記事を庁内で情報共有することで行財政情報を収集・共有していましたが、その作業が煩雑かつ膨大なうえ、情報選定の基準は担当者の判断に委ねられる部分が多く、情報収集の精度改善が課題になっていました。取得できる情報に地域的な偏りがあり、全国の情報を収集できていないという問題もありました。

そこで、こうした課題等を解消するため、自治体規模別やテーマ別など自由にスクリーニングでき、効率的かつ広範に行政情報や先進事例を収集できる全国各地の行政情報を網羅した行財政専門情報サービスを導入することにしました。利用開始以降、同市では他自治体の先進事例を参考にした業務改善や新たな企画立案につなげる職員が多くなるなどの変化がみられているそうです。

事例

松江市が利用している行財政専門情報サービス
詳しい記事はコチラから

ダウンロード

ダウンロード

<参照元>
人事院「時代の変化を踏まえたこれからの人材育成」
藤枝市ホームページ
箕面市ホームページ
松江市ホームページ
自治体通信 Vol.2「継続的な受検の実施で職員一人ひとりの法務知識が向上」
自治体通信 Vol.18「選りすぐりの行政情報を活用し政策立案力に磨きをかける」
    等

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