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学校のICT基盤整備における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

2019/7/31

学校のICT基盤整備における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

教育現場のICT化が国を挙げて推進されています。学校のICT基盤整備を円滑に進める取り組みや方法とは? 事例などを通じて、そのポイントを探りました。
 
【目次】
■学校のICT基盤整備の現状とは
■事例①【使いやすいプラットフォーム】能登町(石川県)
■事例②【ヘルプデスクで先生を支援】下関市(山口県)
■事例③【福祉と教育を一体化】日野市(東京都)

学校のICT基盤整備の現状とは

令和2年から同4年にかけて小学校・中学校・高等学校に順次に実施される新学習指導要領により情報教育・ICT活用教育が本格的に取り入れられることなどから、学校教育の現場が現在とは大きく変化することが予想されます。

同時に、児童生徒の情報活用能力の育成を図るため、各学校においてはコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要なICT基盤整備を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ることが求められています。しかし、そこにはさまざまな困難があるようです。

たとえば、平成29年に文部科学省が各自治体に向けて作成した「地方自治体のための学校のICT環境整備推進の手引き」の冒頭にある「はじめに」では、「無線LAN整備率が0から100%まであるような広がりがあり、地方自治体の格差と温度差はきわめて大きい」と、学校におけるICT基盤整備の現状を振り返っています。

また、「文部科学省の調査によれば、担当も組織もなく、情報化推進計画の策定に進むことができない自治体は、約70%近くになる」とのデータを示しつつ、「教育担当者は、学校現場と行政の接点もなく、ICT戦略に関する相談相手もおらず、首長の政策・構想もなく、予算・助成金申請もない、という孤独な姿が見える」と厳しく指摘してます。

一方で、さまざまな工夫をしながら学校のICT基盤整備を推進している自治体も少なくありません。次に、そうした先進事例を紹介します。

事例①【使いやすいプラットフォーム】能登町(石川県)

平成25年に石川県初の無料公営塾「鳳雛(ほうすう)塾」を開設するなど、教育行政に力を入れている能登町(石川県)は新たな教育環境の整備推進を目的としたICT教育プラットフォームを導入しています。

これは、タブレットやスマートフォンを活用して公営塾と地元の県立能登高校を結び、「教師の授業・生徒指導」と「生徒の学習」をサポートするシステムです。学校の授業のみならず自宅学習まで一貫サポートすることで生徒の学力を向上を図るとともに、新学習指導要領が重点目標としている思考力・判断力・表現力を重視する新しい学力基準である、いわゆる「21世紀型スキル」も育成するのがねらい。従来の知識定着型の学力向上でも効果があると同町では期待しています。

同町では以前もICT教育プラットフォームの導入を試みたことがあります。しかし当時のシステムは煩雑で、使用頻度が上がらず十分な効果を得られませんでした。そこで、新たに使いやすさを重視したプラットフォーム設計を採用した学習支援クラウドサービスを導入することにし、教師が簡単に生徒にアプローチできる仕組みの構築を目指しました。

同町では人口減少で学校の統廃合が進むなか、地元高校を存続させることが地域の重要課題との認識を住民と共有し、町の旗振りで「能登高校を応援する会」を結成し、さまざまな支援を行っています。今回のICT教育プラットフォーム導入もその一環です。「子どもたちにとってプラスになることなら積極的に取り入れていこう」との地域コンセンサスを自治体が主導して形成することが、学校のICT基盤整備を円滑に推進するポイントのひとつなのかもしれません。

事例

能登町が採用したICT教育プラットフォーム
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[提供] Classi株式会社




事例②【ヘルプデスクで先生を支援】下関市(山口県)

下関市(山口県)で教師のICT習熟度向上を支援する専用ヘルプデスクを設置しています。

情報活用能力を「学習の基盤となる資質・能力」と位置付けた新学習指導要領の実施をきっかけに、今後、教育現場にさまざまな最新ICT機器や高度なICTツールなどが導入されていくことが予想されます。そこで課題となるのが、児童生徒にそれらのICT機器やツールを使いこなしながら教育を実施する教師側のICT習熟度の向上です。

しかし、これまで教育現場にはそれらの機器などを積極的に利活用する機会が多くなく、慣れない教育現場に少なからぬ負担をかけざるえないのが現状です。そのため下関市では、教師の負担軽減や教育現場の混乱を防止するため、ICTに関する学校からの問い合わせを専門知識と豊富な経験をもったヘルプデスクが一括して対応する仕組みをつくりました。

同市では中学校のPC教室では生徒1人に1台、小学校では同じく児童2人に1台のノートPCを整備しており、さらにタブレット端末は数人に1台の割合で導入。グループ学習が実施できる体制を整えるなど、学校のICT基盤整備に注力してきました。同時に、基盤整備が進むにつれ、ネットワークの不具合や機器の使い方など多岐にわたる問い合わせが学校から教育委員会に入るようになりました。

そこで同市では民間企業と教育ICT支援に関する協定を締結し、問い合わせ対応を委託するとともに、電話一本で現地対応にも応じるヘルプデスクを設置することにしました。学校側からは「ICT教育を支援してくれる専門家のサポートは心強い」との声が出ているそうです。

事例

下関市が採用したヘルプデスク
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[提供] 株式会社NTTフィールドテクノ
中国支店




事例③【福祉と教育を一体化】日野市(東京都)

新学習指導要領の実施にともなったICT基盤整備だけではなく、息の長い教育支援でICTを活用している事例もあります。

たとえば日野市(東京都)では、0歳から18歳までの発達面・行動面・学校生活面において支援を必要とする子ども児童生徒の教育支援について、教育と福祉という部局の枠を越えた一貫性のある「発達・教育支援システム」を構築しました。小・中学校、公立の幼稚園、保育園を切りに、私立の施設にも枠を広げ、市内の約80拠点で導入を進めています。

同市では平成26年に教育部門と福祉部門の部署を設置した保護者の総合的な相談・支援機関として「日野市発達・教育支援センター」を開設。全国でも珍しい、教育と福祉が一体となって子どもの育ちに関する相談窓口を一本化する先進的な仕組みをつくりました。

しかし、就学や進学にあたって、支援情報が小・中学校間など、子どもの各所属先の間でうまく引き継がれない状況がありました。そのため、平成28年度から情報を電子化し、ネットワークを通じて関係機関の間で共有する仕組みとして「発達・教育支援システム」を導入。支援情報を単に保管するのではなく、利活用して支援を充実させる体制を整備しました。

最大の特長は、市内のすべての小中学校に導入されている校務支援システム内の個別指導計画とデータ連携している点。支援情報の重複を避け、かつ保育園・幼稚園・小中高校の現場の先生が日頃作成する指導目標や支援記録をそのまま活用することで、統合型の情報管理システムとしたことです。これにより、直接の交流機会が少ない保育園と小学校など所属先間で支援情報が引き継がれることになり、子どものライフステージを通じた一貫性のある支援を共有できるようになりました。

教育現場などからは、転校先でも支援情報が引き継がれるよう自治体間で接続する教育支援情報ネットワークへと全国に拡充されていくことを望む声が聞かれています。

事例

日野市が導入した発達・教育支援システム
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[提供] 株式会社ワイ・シー・シー




<参照元>
文部科学省「新学習指導要領のポイント」「地方自治体のための学校のICT環境整備 推進の手引き」
能登町ホームページ
下関市ホームページ
日野市ホームペ-ジ
自治体通信 Vol.5「ICTで教育現場を魅力化し統廃合の波から地域の学校を守る」
自治体通信 Vol.11「福祉と教育の一体化を進め、発達障害児への『切れ目のない支援』を実現する」
自治体通信Vol.17「整備が進む教育ICT深まる「現場の悩み」はみえていますか」     等

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