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地方創生関係交付金について・地方創生事業・実施事例【ローカルイノベーション(しごと創生分野①)】【自治体事例の教科書】

2020/07/17

地方創生関係交付金について・地方創生事業・実施事例【ローカルイノベーション(しごと創生分野①)】【自治体事例の教科書】

平成26年に制定された「まち・ひと・しごと創生法」により、国と地方が協力することで人口減少に歯止めをかけ、東京圏への一極集中を是正し、地方創生に取り組むことが法律によって位置づけられました。これに伴い、日本では地方創生に係る交付金による、地方自治体への支援が行われることとなりました。今回は、地方創生関係交付金の概要と、地方創生事業における実施事例についてご紹介します。

【目次】
■地方創生事業の現状とは
■事例①「インキュベーション施設による企業支援」取手市(茨城県)
■事例②「美濃和紙のブランディングによる価値向上」美濃市(岐阜県)
■事例③「地域イノベーションによる強い産業の創出」津山市(岡山県)

地方創生事業の現状とは

地方創生関係交付金は、官民協働や政策間連携、地域間連携といった先駆的な要素を有しているのが特徴で、「しごとの創生」や「地方への人の流れの創出」、「まちづくり」等の地方創生に資する取組に対して国が認定し、将来的には自走できる事業とすることを前提に支援が行われるものです。各自治体では、こうした交付金による国の支援を得ながら、地域の創生に向けてさまざまな施策を講じ、改善に取り組んでいます。次に、各自治体のそうした事例を紹介します。

事例①「インキュベーション施設による企業支援」取手市(茨城県)

取手市では、創業支援事業の「起業家タウン☆取手」を実施しました。同事業の実施に至った背景には、以下の課題が挙げられます。

①都心回帰による子育て世代の減少
②街全体の高齢化による生産人口の低下
③地域の活力の低下

まず、都心回帰による影響で子育て世代の減少が懸念されます。同時に、街全体の高齢化が進み、中小企業の廃業や商店の閉店が起こると、生産人口が低下し地域の活力が失われてしまう問題があります。同市はこれらの課題を解決するために、地方創生先行型交付金の先駆的事業分(タイプI)による、以下の施策を実施しました。

①インキュベーション施設の設置
②セミナーや創業スクールの開催
③市内の金融機関、中小企業等の起業応援団による商品やサービスの低価格または無償での提供

これらの取組によって、街ぐるみで起業を支援する体制を整えることで、20~30代の若年人口の市街流出を防ぐねらいがあります。さらに同市では、上記の施策に加えて、官民協働による以下の取組も行われています。

①起業者の紹介と起業応援団への参加を促すフリーペーパーの発行
②他地域との交流強化

これらの施策を行うことで、地域を越えて「誰もが起業を応援する」社会の実現を目指しています。重要業績評価指標であるKPIは、平成29年3月時点で起業家数110人に対し、起業応援団参加企業数150社から、平成30年3月時点では起業家数270人に対し、起業応援団参加企業数350社まで増加しており、創業支援事業の効果が伺えます。

取手市では、事業の創出や創業を支援するインキュベーション施設の設置や起業応援団への参加の呼びかけといった取組に加えて、起業者向けの補助制度の支援も行っています。たとえば、地元金融機関が起業応援団に加入することで、低利融資等を通じて起業の支援を行っています。これらの取組は、街ぐるみで支援を行われているのが特徴です。たとえば、起業希望者を支援するインキュベーション施設の運営を担うのは、本事業のために設立する一般社団法人だけではなく、地元の民間企業で起業応援団を結成して支援します。

このように、起業者向けのサービスを実施することで、起業を理由とする若者の都心流出を防ぎ、取手市内の地域活性化を目指しています。上記に加えて、政策間連携による取組も行われています。

①駅前のインキュベーション施設にサテライトオフィス機能を付与し、近隣にある保育、子育て支援施設を利用することで、働きながら子育てができる環境を構築する。
②インキュベーション施設の利用者に対し、起業の際に空き店舗をあっせんして、雇用創出と中心市街地の活性化を目指す。
③インキュベーション施設の設置や相談窓口の提供、起業応援団による支援など、ワンストップで起業を支援する。

同市の取組の中で、インキュベーション施設にサテライトオフィス機能を付与する際には、近隣の保育施設などの起業者以外にも机や通信環境を貸与することで、子育てと両立して働くことができる環境づくりの実現を支援しています。
さらに取手市では、起業家の自走を支援するための取組として、平成31年度までに、レンタルオフィス事業等による収入を中心とした自立運営ができる経営計画を立てており、今後も継続して起業家を支援する方針です。

事例②「美濃和紙のブランディングによる価値向上」美濃市(岐阜県)

美濃市では、同市の保有する美濃紙手漉和紙技術を活用して、「美濃和紙ブランドの価値向上・発信事業」を実施しました。事業の実施に至った背景には、美濃和紙でしられる美濃市の保有する伝統技術の後継者不足にあります。美濃紙手漉和紙技術は、ユネスコ無形文化遺産に登録されており、日本の代表的な和紙として重視される一方で、若手後継者の育成が大きな課題になっております。また、美濃和紙の需要拡大のためのプロモーション戦略も重要です。同事業では岐阜県と美濃市による一般財源化を行い、手漉和紙の後継者育成のため研修を行っています。さらに美濃和紙のブランド戦略づくりとして、海外市場開拓のため国際見本市等への出展を行ったほか、地方創生先行型交付金の先駆的事業分(タイプI)での取組を実施しています。

同事業では、以下の目的の達成が課題となります。

①若手後継者の育成
②需要拡大
③企業とのマッチングを支援

これに加えて、同事業では、以下の先駆性に係る取組が重要視されております。

①官民協働
②政策間連携
③地域間連携
④自立性

まず官民協働について、岐阜県および美濃市は、ブランドコンセプトの広報活動を行うため、国内外での見本市や展示会に美濃和紙製品を出展し、広報活動を行ったほか、産地の生産者と和紙を用いた製品づくりを担う企業とのマッチングの支援も行いました。民間事業者は、美濃和紙のブランドコンセプトを具現化する商品開発やブランドの権利保護に係る取組を担います。

次に政策間連携について、本事業によるブランド価値向上による美濃和紙産業の自立という目標に向けて、美濃和紙産地が抱える次の3課題の解決に向けて取組を行っています。

①後継者育成
②良質な原料確保
③需要減少

まず美濃和紙や美濃和紙ブランドとしての知名度が向上することで、産地・美濃市への誘客促進が加速されることが期待できるほか、近隣観光地への好影響をもたらすことを期待できます。自立性については、早期に民間事業者の自立的な取組として自立化させることを目標としたうえで、事業開始当初は岐阜県と美濃市が連携して後継者育成と販路拡大に対する支援を行います。具体的には、美濃和紙のブランドマークを定め、認知度・信頼度を高めていくことで、使用料による自立化を目指す方法が挙げられます。これらの取組によるメリットは、以下のとおりです。

①関係者が役割分担をして効果的に連携している
②伝統産業の後継者問題の解消
③販路拡大による売上の増加
④ブランド化による価値向上
⑤事業者の売上増による早期自立化

同事業に関しては、官民協働において役割分担を明確にすることで、効果的に連携できるメリットがあります。たとえば、企業のマッチングや広報は行政が、具体的な商品開発等は民間事業者が、人材研修については県と市が一般財源化するといった役割分担によって、事業を効率的に進められます。また、伝統産業の後継者問題を解消しながら、販路拡大による売上の増加を図ることができる点も工夫が見られます。販路開拓やブランド構築等についても、事業者の売上増によって早期に自立化させることが可能です。KPIに関しても、平成29年3月時点での美濃和紙ブランドを使用できる「美濃和紙ブランド協働組合」加盟事業者の売上高合計:1割増加(平成25年度73億円)に対し、平成30年3月時点では2割増加(平成25年度73億円)と事業の効果を確認できます。

事例③「地域イノベーションによる強い産業の創出」津山市(岡山県)

津山市では、「津山版地域イノベーション・プラットフォームによる強い産業の創出事業」を実施しました。事業の実施に至った背景には、津山市が中小企業の集積地であり、金属加工の高い技術を有する地域の強みと、少子高齢化に伴う若者流出といった課題を抱えていることが理由に挙げられます。同市は3,000を超す幅広い業種の中小企業が集積する地域であり、金属加工の高い技術を有する企業が多数あることでも全国的によく知られている特色があります。その一方で、人口減少や高齢化による課題も抱えています。とくに大学進学とともに若者が流出する「18歳の崖」が大きな課題として挙げられます。こうした背景から、津山市は、若者の定住と就業につなげるために、以下の目標を定めました。

①地域産業活性化
②魅力的な雇用の創出
③地域イノベーションの創出

これらを実現するためには、地域から経常的、自律的にイノベーションが生まれる仕組みを構築する必要があります。まず、地域内の企業への支援メニューや研究開発の枠組みを融合し、産業人材の育成についても同様に、地域内就職と定着および活躍を可能とする仕組みを強化する必要があります。具体的には、以下の施策が挙げられます。

①専門家による企業診断
②地域外企業との交流会
③大手企業や教育機関による研修の実施

これらの取組は、中小企業の弱みを補完すると同時に、地域の持つ高い技術力を活かし、産業力強化を図るものです。津山市地域内の企業が抱える弱点であるデザインや設計分野に対しては、交流会を行うことで、強みを持つ企業とのコラボレーションにつなげることが可能です。また、地域産業人材育成についても、大手企業や教育機関による研修を実施する対策を行っています。

さらに同市では、上記の施策に加えて、官民協働による以下の取組も行われています。他企業との交流の場を提供し、学生への情報発信を行うことで、魅力を訴求すると同時に、大手企業への協力要請など中小企業が産業力強化を行える環境を整備しました。これに対し民間企業は、産業力強化に向けた取組を主体的に推進しています。たとえば、以下の取組が挙げられます。

①他の企業とのコラボレーションによる試作品の開発
②大手企業との研修会などを通じた生産性の向上
③教育機関との共同研究やインターンシップの強化

こうした民間事業者の成長に向けた取組に対し、金融機関がファンド形成などでバックアップすることで、効果的な連携をとっています。政策間連携に関しては、以下の施策と連携を行っています。

①企業競争力の向上を通じた産業振興策
②若者の流出防止と企業の流入増による人口対策
③働きやすく暮らしやすいまちづくり政策

自立化に向けての取組は、民間企業、団体からの会費や金融機関のファンド形成等を見込んだプラットフォームで実施しています。また、同市が取り組んでいる手法は全国的にも希少であり、中小企業同士がコラボレーションを行いながら、生産効率の向上に向けた評価を導入していくというモデルを確立し、全国展開を行うことで、ブランド化を目指しています。KPIに関しても、平成29年3月時点での支援対象企業群の生産高向上:10億円に対し、平成32年3月時点では支援対象企業群の生産高向上:200億円と大幅に上昇しており、地域創生に大きく貢献していることが伺える結果となりました。

津山市は、技術力の高い中小企業が集積している地域の特性を活かし、それぞれに強みを持つ企業同士がコラボレーションし補完しあうことで、新たな付加価値を提供するプラットフォームを構築することに成功しました。行政は環境整備、企業は主体的な取組、金融機関は事業拡大支援と、産学官金がそれぞれの役割を効率的に分担することで、産業力強化に向けた取組を推進しています。またプラットフォームについても、会費収入等によって自立への道筋を立てています。同市によるこれらの取組をモデル化し、全国展開していくことで、ブランド化の確立が期待できます。

〈参照元〉

内閣府_地方創生推進事務局_地方創生に係る特徴的な取組事例
(http://www.town.bihoro.hokkaido.jp/docs/2016060900011/files/jirei.pdf)

茨城県取手市_取手市ホームページ
(https://www.city.toride.ibaraki.jp/sanshin/jigyosha/shokogyo/sougyousienn/
sougyousiennjigyoukeikaku.html
)

岐阜県美濃市_美濃市ホームページ
(http://www.city.mino.gifu.jp/pages/40509)

岡山県津山市_津山市ホームページ
(https://www.city.tsuyama.lg.jp/life/index2.php?id=6385)

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