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陸前高田市、加賀市、宇陀市 の取り組み

官民連携で高齢者福祉の充実に取り組む先進事例

官民連携で高齢者福祉の充実に取り組む先進事例

陸前高田市、加賀市、宇陀市

超高齢社会の進展で、重要性が増している介護予防事業。実効性を高めるには、官民連携が不可欠である。そこで、民間をうまく活用し、高齢者福祉施策の充実を図っている陸前高田市、加賀市、宇陀市を取材。二次予防事業の対象者把握の実情や今後のビジョンなどを聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.1(経営者通信31号自治体特集)(2014年4月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。

デザインなどを工夫し85 %の高回答率を実現

回答率が全国平均を大きく上回っている岩手県の陸前高田市。その秘訣などを民生部健康推進課保健係介護予防担当の千葉愛実(ちばまなみ)保健師に聞いた。

きめ細かな地区別データも捕捉

―対象者把握事業の実情を教えてください。

 平成25年度の対象者は3002名で、回答率は85%という結果でした。全国平均をかなり上回っているのは、わかりやすいイラストをふんだんに入れるなど、調査票のデザインを高齢者本位にしたこと、電話・ハガキによる未回答者へのフォローに力を入れているなどの理由が挙げられます。
 とくに調査票のデザインにはこだわりました。委託業者であるエストコーポレーションの提案を参考に、見やすく、わかりやすく、回答しやすいよう、カラフルにするなどの工夫をしました。
 また、同社からは8つにわかれている地区ごとの傾向が捕捉できるようデータ加工の提案も受け、実際に取り入れています。

―どのようにして地区別データを捕捉しているのですか。

 通常のデータとは別に、検索や並び替えが簡単にできるファイルを作成しています。
 本来、仕様書には含まれていない業務なのですが、対象者把握の一環ということで、追加コストなしで作成してくれています。

はまってけらいん かだってけらいん

―介護事業の取り組みで力を入れている点を教えてください。

 東日本大震災の影響で多くの施設が被災したことから、いままさに介護事業全般の再構築に取り組んでいるところです。
 その一翼になっているのが「チームけせんの和」。これは市内の医療機関、介護事業所、薬局の8割以上が参加している地域連携の会。介護にかかわる他職種がともに学ぶ場を多くすることにより、互いの職種の仕事を理解して「顔が見える関係」になることで、介護の課題を解決できる「心の見える関係」を目指しています。岩手県立高田病院の石木幹人前院長が発起人になり、昨年7月に再結成されました。市は会の事務局を務めており、関係各機関などとの連絡調整や、必要な施策の検討などを行っています。
 また、震災後、住環境やコミュニティが大きく変化し、仮設在宅における孤独感や高齢者の閉じこもりが増えてきました。それにともない陸前高田市では「はまってけらいん、かだってけらいん」運動を進めています。

―運動の内容を教えてください。

「はまってけらいん、かだってけらいん」とは、「集まって、話をしよう」という意味です。震災で誰もがさまざまなストレスを抱えている状態でありますが、誰かと言葉を交わすことで重かった心が少し軽くなり、気がつけばお互いの心を癒していきます。
 以前までは、買い物先、病院の待合室など日常の中でできていましたが、震災により難しくなってきました。そこで、市民のみなさんが少しでも前向きに外に出て、誰かとつながるきっかけづくりになればと思っています。
 市民・保健・福祉・医療の現場で活動する団体や専門家、市役所の関係各課で構成する「未来図会議」が提唱し、広げています。

―今後のビジョンを聞かせてください。

 当市は高齢者のQOL向上のため、二次予防事業に注力しています。地域連携や官民協働を一層推進し、高齢者が住みやすいまちづくりを実現したいですね。

データ集計の時間短縮で事業内容が充実

包括ケアの仕組みづくりに取り組む石川県の加賀市。二次予防事業の特色などを地域包括センターの北村喜一郎保健師に聞いた。

既存の枠にとらわれないサービス提供を推進

―二次予防事業の現状を教えてください。

 加賀市では平成24年度から平成26年度までの介護保険事業、高齢者福祉施策を定めた第5期介護保険事業計画・高齢者福祉計画である「高齢者お達者プラン(以下、お達者プラン)」を平成24年3月に策定。二次予防事業についてもお達者プランに基づき各種の事業を推進しています。
 具体的には、基本チェックリストの結果により、要介護状態になるおそれの高い二次予防事業対象者に対して、必要なプログラムの紹介を行い、積極的に参加していただくことで、現在の生活課題が解決できるような支援を行っています。
 さらに、二次予防事業対象者と要支援者に対して、介護予防・日常生活支援総合事業の導入を目指し、高齢者の視点に立った柔軟な対応や、既存の枠組みにとらわれないサービス提供に向け、検討会を立ち上げて検討しています。

データがタイムリーに届く市には欠かせないパートナー

―対象者把握については、どのような取り組みをしていますか。

 特定健診に合わせて介護予防基本チェックリストを同封していた頃は、おおよそ回答率は2割程度。3年前から単独でエストコーポレーションに対象者把握事業を委託し、返信用封筒の同封の導入を行ったことがターニングポイントになり、今年度の回答率は60%に上昇しました。
 平成25年度からは未回答の対象者に、再度回答の返信を促すお手紙を発送しています。
 高齢者のみなさんに基本チェックリスト記入の重要性についての認識を深めていただく働きかけをしながら、さらなる回答率の向上に努めたいですね。

―対象者把握を外部委託したことで、どのような効果がありましたか。

 エストコーポレーションに委託する以前は、1年前のデータに基づいて各種事業のスケジュールを組んでいました。しかし、同社に委託したことで、データ捕捉のリードタイムが短縮され、ニーズに沿った介護予防教室などの開催が可能になりました。データの捕捉は、ほとんどリアルタイムに近いという印象ですね。
 また、エストコーポレーションは提供サービスを細かく切り分けるのではなく、オールインワンで実行して細かなニーズにも応えてくれます。追加費用なしでさまざまなサービスを提供してもらえるので、事業推進の機動力が高まりました。
 その結果、データを活かした事業を展開したり、水際作戦での個別対応に専門職としての力を発揮することができました。単なる外部委託業者ではなく、市のパートナーだと考えています。

―今後のビジョンを教えてください。

 当市では一般の高齢者施策として、お達者プランに基づき、おもに公民館単位で「地域おたっしゃサークル」という高齢者が定期で集える場づくりをしています。
 ここでは、転倒予防や認知症予防といった介護予防に資する内容の講座などを開催しており、2000名近くの高齢者が登録しています。
 住み慣れた地域で支え合いながら、その人らしく、自立した暮らしを続けられることを目的に、今後も高齢者の想いに応える施策に取り組んでいきたいですね。

委託業者との情報交換が対象者把握にも好影響

ウェルネスシティ構想を本格始動させる奈良県の宇陀市。介護予防事業のビジョンなどを介護福祉課の鈴木隆仁課長補佐に聞いた。

筋力アップ体操などを推進し健康寿命の延伸に取り組む

―介護予防事業で力点を置いていることを教えてください。

 ただ長生きするのではなく〝健康長寿〟の実現を目指し、健康寿命の延伸に取り組んでいます。
 健康寿命とは、平均余命から要介護認定2以上の状態がある期間を差し引いた年数で、65 歳以上の高齢者が元気で自立した生活を送ることができる期間のことです。
 平成22年における当市の健康寿命は、65歳の場合、男性は約17 年、女性は21年という結果になっており、この年数の延長を促進する事業に取り組んでいるところです。

―具体的には、どのようなプランがあるのですか。

 高齢者を対象とした筋力アップ運動教室や地域サロンの拡充に取り組んでいるほか、高齢者の方たちの趣味が実益になる方法についても検討しています。また、介護予防教室の参加者増にも取り組んでいます。
 これらの施策を通じて、高齢者が心身ともに健やかに、イキイキと自立した生活を送れるまちの実現を目指しています。

―対象者把握の状況を聞かせてください。

 平成24年度は約9000名の対象者にチェックリストを発送。回答率は約70%でした。
 委託業者はエストコーポレーションです。当市の回答率が全国的にみても高いのは、同社の協力も大きいと考えています。

担当者を含め会社全体が情熱をもっている

―どういった協力があるのですか。

 データ分析など、ちょっとした作業でも迅速な対応をしてくれます。また、ほかの自治体が行っている創意工夫について情報交換できるのはとても助かっています。エストコーポレーションは全国規模で対象者把握事業を受託しているため、各地の事情に精通しているという印象です。二次予防事業についても詳しいですね。
 単にスキルやノウハウがあるからだけではなく、担当者を含め、会社全体として高齢者施策に対する情熱をもっていると感じています。今後もこうした民間の協力をえて、高齢者施策を充実させていきたいと考えています。

―高齢者施策などについての御市の今後のビジョンを聞かせてください。

 当市では、高齢者をはじめ、市民のだれもが身体面の健康だけでなく、生きがいを感じ、安心して豊かな生活を送れるまちづくりを目指しています。そのため、平成
26年度から「ウェルネスシティ構想」に基づいたさまざまな事業を推進する計画です。
 ウェルネスシティ構想は「健幸」をまちづくりの基本に据えた政策を連携しながら実行することにより、市民の健康寿命を延伸し、健幸長寿の市の実現を目指した市総合計画の重要施策のひとつ。たとえば、健康診断の受診をはじめ、健康維持・健康づくりのための活動などについて、自主的や公的な事業活動に参加される市民は全国規模で3割程度といわれますが、当市では今後5年間ぐらいかけてこの比率を逆転させ、7割の人に参加していただくことなどを目指しています。
 これからも市全体で意識を共有しながら、未来につながる宇陀市を創っていきたいですね。

陸前高田市、加賀市、宇陀市(りくぜんたかたし、かがし、うだし)プロフィール

[陸前高田市]
■人口:2万541人(平成26年1月31日現在)
■世帯数:7,555世帯(同上)
■予算規模:1,019億1,100万円(平成25年度当初予算)
■面積:232.29k㎡

[加賀市]
■人口:7万1,284人(平成26年1月1日現在)
■世帯数:2万8,976世帯(同上)
■予算規模:282億9,600万円(平成25年度当初予算)
■面積:306.00km²

[宇陀市]
■人口:3万3,548人(平成26年2月1日現在)
■世帯数:13,207世帯(同上)
■予算規模:172億6,000万円(平成25年度当初予算)
■面積:247.62km²

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