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高知県黒潮町 の取り組み

XPサポート終了という「自治体の憂鬱」を解決する処方箋

再生PC導入でコストを3分の1に

情報防災課 情報推進係長 小橋 賢二

自治体では全国初事例となる随意契約での再生PC調達を行った高知県の黒潮町。これまでの経緯やポイントになった点などを情報防災課の小橋賢二係長に聞いた。
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※下記は自治体通信 Vol.1(経営者通信31号自治体特集)(2014年4月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。

スタンドアローンでの使用は非現実的

―2014年問題の対応について、当初の基本姿勢はどうだったのか、教えてください。

 平成25年度以前に、サポート終了後はすべてウィンドウズ7以降のOSに切り換える計画を策定していました。役場や学校現場であつかう重要な情報をさまざまな脅威から守るためには、セキュリティ上の脆弱性を有する環境は残せないからです。
 当町の場合、役場や関係機関のPCはすべて、町のイントラネットのなかで稼働しています。ですから、スタンドアローンで運用するのは非現実的だと判断しています。

―今回、御町が導入した再生PC、リフォームPCとはどういったものなのですか。

 再生PCは、現在使用のものよりもスペックなどの状態がよい中古PCに新しいOSをセットアップしたものです。リフォームPCはPCを購入当初の状態にクリーニングし、新たにOSをセットアップしたPCです。

―今回、再生PCなどを利用した理由を聞かせてください。

 もっとも大きな理由は、町の財政事情です。
 すべて新品のPCに買い替えた場合、調達費用は約2000万円にものぼり、補正での予算化は非常に困難でした。しかし、再生PCなどを活用すれば調達コストが3分の1近くの700万円程度に圧縮でき、補正予算の範囲内でOSを切り替えられることが見込めました。

保守サービスは通常のベンダーより上

―随意契約にした理由を教えてください。

 本来は指名競争入札をしたかったんです。しかし、再生PCなどを取り扱っている会社で当町の指名登録をしている企業は存在しませんでした。
 そのため、見積聴取による随意契約とする必要があり、地方自治法施行令第167条の2の第1項第2号を適用し、随意契約理由としました。

―そもそも、再生PCなどの利用で2014年問題に対応できることに気付いたのはいつですか。

 去年の秋口です。以前からマイクロソフト(以下、MS)と2014年問題の対応方法についてたびたび話し合っていたのですが、そのやり取りのなかで、再生PCやリフォームPCの提案がMSからありました。
 そのときは「品質確保が難しいのではないか」と思い、躊躇しました。町では再生PCを調達した経験がなかったからです。しかし、「MARプラグラムというMSが定める基準を順守して再生処理を行っている認定事業者が存在する」との説明をMSから聞き、「それなら一度話を聞いてみよう」と考え、認定事業者から詳しい説明を受けました。

―認定事業者からはどのような説明がありましたか。

 再生PCの製造プロセスや保守サービスなどについての説明がありました。
 とくに再生PCについては、データ消去や動作検証など、一連の製造プロセスの詳しい説明を聞きました。MSの認定事業者の再生PCなら、一定水準の品質が確保されているとの印象をもちました。
 保守サービスの内容も魅力的でした。修理中は代替PCを送ってくれるなど、通常のベンダーと比べても一段上だと感じました。

長期的な業務効率化に役立つ

―懸念材料はありませんでしたか。

 新品のPCに比べ、使用年数が2年程度短くなることについて、町役場内で議論がありました。
 しかし、再生PCの場合、コストを抑制しながら短いサイクルでPCの入れ替えができるため、逆にトータルメリットは大きいとの結論になりました。

―入れ替えサイクルが短くなると、どのようなメリットがあるのですか。

 適切なタイミングでPCのスペック向上がはかれるため、町の業務遂行の円滑化を促進するというメリットがあります。
 経験則で言うと、新品のPCでも導入から5年くらい経過すると動作が重くなり、普通の作業すらスムーズに処理できなくなります。少し不具合のあるPCなら、セキュリティパッチのダウンロードだけで10分~20分もかかる場合もあり、町の業務に支障をきたすケースすらありました。PCを更新し、スペックを向上させればそうした問題は解決しますが、そのつど新品に切り替えるのは非現実的。ですから、これまでは我慢して使い続けてきました。
 しかし、再生PCの場合は更新サイクルが短くなるため、スペックの向上も早くなります。短期的なイニシャルコストの抑制だけではなく、時間当たりの処理量を増やすため、再生PCの導入は長期的な業務効率化に役立つと考えています。
 このほかにも今回の調達案件は、町役場に波及効果をもたらしています。

固定観念を変える大きな一歩

―どのような波及効果があるのですか。

 使用する用途に合わせて適切なPCを調達する、という考え方が役場内で定着しつつあります。
 再生PCなどの存在を知る前は、更新はすべて新品で対応していました。しかし、役場内のすべてのPCが新品でなければいけない理由はありません。日常業務でCAD・CAMを使うなど、ハイスペックなPCを必要不可欠としている専門部署がある一方、ワード、エクセル、メールなど、一般的なソフトで業務が完結するところもあるからです。
 そのため、今後はハイスペックなPCを必要としない部署では、再生PCなどへの更新が行われるようになるでしょう。今回は2014年問題に対応するためでしたが、使用する用途に合わせた適切なPC調達を実現するための大きな一歩になったと思います。

―町議会はどのような反応でしたか。

 OSの切り替えの必要性そのものについては、議会も納得していました。
 委員会の審査では、再生PCの性能について質問がありました。それについては、MSの認定事業者からの調達である点を説明し、問題のないことを理解してもらいました。
 また、再生PCですら高いとの質問もありました。町には全部で700台のPCがあり、ダメになった機器を毎年更新しているので、昨年の春先に入れた新品PCの1台当たりの入札額と今回の1台当たりの額を比較して、調達コストが半分以下になることを説明しました。
 最終的に、今回の再生PC導入を含めた補正予算案は、町議会の全会一致をもって可決、成立しました。

安全・安心の再生中古PCを 普及するための認定制度

再生中古PCの調達にあたって黒潮町が重視したマイクロソフトの認定制度、MARプログロムとは、どういったものか。日本マイクロソフトでパブリックセクター統括本部マネージャーを務め、自治体など官公庁の教育分野を担当している浜迫氏に聞いた。

優良かつ大規模なPC再生事業者だけを認定する制度

―MARプログラムとは、どういう制度なのですか。

 毎月の平均で1 0 0 0 台( 年間1万2000台)以上のPC再生する大規模なPC再生事業者を対象にした認定制度で、認定事業者から出荷されるいわゆる再生中古PCに正規Windows OSのセカンダリライセンスを提供するプログラムです。
 MARとは、Microsoft Authorized Refurbisherの略称で、現在10社の再生事業者が認定されています。このプログラムに参加した事業者には、当社と強力な関係を築ける、再生中古PCに正規のセカンダリライセンスを使用できる、ソフトウェアの展開プロセスを簡素化する独自のインストールツールにアクセスできる、などのメリットがあります。
 ちなみに、認定再生事業者が正規のセカンダリライセンスを搭載し提供しているものを再生中古PCと呼び、それ以外の認定されていない事業者や正規ライセンスを使用できないものについては中古PCと呼び、区別しています。また、認定再生事業者では、便利なボリュームライセンスも提供しています。

2枚の認証ラベルが正規品の証拠

―ボリュームライセンスとはなんですか。

 マイクロソフトが提供する Windows、Microsoft Office などのソフトウェアを法人向けの特別価格で提供するライセンスプログラムです。ポータルサイトから簡単な方法でライセンスを一元管理できるほか、最新バージョンのソフトウェアへのアップグレードを標準で提供するライセンスオプションもあります。
 また、教育機関向けでは、年間契約ライセンスや教職員の人数で料金をカウントするライセンスプログラムなどを提供しています。これは、特別価格で教職員や生徒、学生が共同作業や学習などにおいて利活用できるボリュームライセンスプログラムです。

―認定事業者以外から調達した場合、どういったリスクがありますか。

 悪質な事業者になると、中古PCに偽造品や正規ライセンスをもたないソフトウェアをインストールして販売するケースがよくあります。そのため、PCや周辺機器、保存データが危険にさらされる可能性があります。実際、フィッシング詐欺サイトに誘導された、ウイルスなど悪意のあるマルウェアが含まれていたため、PC内の情報が流出したなどの被害も報告されています。

―認定再生事業者とそうではない業者を見分ける方法を教えてください。

 認定再生事業者が提供する再生中古PCには、プロダクトキーが記された「製造メーカー」と「認定再生事業者」の2枚の認証ラベルが貼られています。また、当社ホームページに認定再生事業者の一覧も掲載しています。

民間の知恵を上手に利用すれば地域活性はさらに前進する

全国初の自治体による再生PC導入事例となった黒潮町のケースは、これからの官民連携のありかたを示した。そこで、地域開発研究所主任研究員の牧瀬氏に、地域活性を促進するため、自治体はどのように民間を活用すべきかを聞いた。

問題の深刻さを理解していてもすぐに自治体が動けない理由

―2014年問題の自治体の対応策について、どう見ていますか。

 自治体は事前に「政策」を用意しておくのではなく事後「対策」、つまりなにかしら問題が起きたときに予算を計上し、具体的に動く傾向があります。2014年問題への自治体の対応でも、同じ傾向が見られます。
 専門家やメディアは、サポート期間終了前の対処の重要性を強く指摘していますが、現時点では実際にトラブルが起きたわけではない。だから、予算計上ができない、という論法です。とりわけ、予算規模が比較的少ない、小さな自治体で対応が遅れているようです。

―事態の深刻さを、自治体はよく理解していないということですか。

 いいえ、そうではありません。OSのサポート終了がどのようなインパクトをもっているのか、ほとんどの現場の自治体職員は正しく理解しています。
 しかし、職員がどれほど問題を深刻にとらえていても、最終的に議会の承認がなければ自治体は動けません。それは2014年問題でも同じ。PCの入れ替えなどについて、肝心の議会が承認してくれそうにないため、二の足を踏んでいる自治体が多いのです。
 また、年度予算を抑制する工夫が難しい点も、自治体の頭を悩ませています。

官民連携の本質

―なぜ、工夫が難しいのですか。

 今回の2014年問題の対応策は、Windows XPを使っているPCについて、そのすべてをいちどに入れ替えるなどの手を打つ必要があります。たとえば2014年まで3年かけて順次入れ替えることで年度予算の抑制を図る、といった発想がなかったのです。
 自治体財政の厳しさは、当然、物品調達の面にも影響をおよぼしています。1台あたりは比較的少額でも、自治体職員が使用しているPCをすべて入れ替えるとなれば、大きな額になります。大切な税金の使途について大きな責任を負っている議会としても、簡単に承認できる案件ではありません。

―どうすれば複雑にからまっている事態を解決できますか。

 ここは民間企業の知恵の出しどころだと思います。民間企業は、議会も納得できるような解決策を自治体に提示すべきです。
 その意味で、今回の黒潮町における再生PCなどの調達は、そのモデルケースになるかもしれません。民間は自治体をとりまく問題を解決できうるイノベーションを開発し自治体などに提案。それを自治体は適切に取り入れて、官民が一緒になって公益を実現していく。それこそ官民連携の本質のひとつなのですから。

民間にもメリットある協働を

―これからの官民連携はどうあるべきですか。

 大学との協働は以前から盛んですが、今後は民間企業とも積極的に進めるべきです。たとえば、ある自治体は地元の信用金庫と協力して、さまざまな事業や調査を行っています。
 埼玉県の市町村と民間企業のワークショップを呼びかけると、自治体職員をはじめ民間企業やNPO団体など約250人が集まったこともありました。
 人口減少時代を迎えて、地域活性は官民に共通した切実な課題です。地域にも民間企業にもメリットがある協働の道を、これからは考えていくべきだと思います。
 自治体には有能で意欲的な職員がたくさんいます。これからも地域活性のために、柔軟な発想で民間活力を上手に取り入れてほしいですね。

高知県黒潮町データ

人口 1万2,388人(平成26年2月28日現在)
世帯数 5,720世帯(同上)
予算規模 91億9,200万円(平成25年度当初予算)
面積 188.47km²
概要 高知県西南部の町。2006年(平成18年)3月20日、幡多郡の佐賀町と大方町が合併して誕生した。カツオの一本釣り漁業が盛ん。

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