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岐阜県飛騨市 の取り組み

SNSを駆使しながら温かい心の「おもてなし」でリピーター獲得

商工観光部 観光課 横山 理恵

    邦画史上、歴史的な興行収入を記録した『君の名は。』。その一部イメージのひとつとなったのが飛騨市(岐阜県)だ。同市は公開前から「映画の舞台になっている」という情報を入手。公開までわずか1ヵ月余りで予算も限られているなか、プロモーションを開始。公開後も市のプロモーションを続けた結果、公開からわずか8ヵ月の間に、推計値で市の人口の2.6倍以上にあたる6万6,000人もの「聖地巡礼者」が飛騨市を訪れた。成功のカギはどこにあるのか。同市の挑みに迫った。

    ―飛騨市がこれまでに行ってきた観光政策について教えてください。

     この飛騨地域は高山市や白川郷、下呂温泉など有名な観光地が多いのですが、当市は受け入れ態勢の面で遅れていました。そこで、世間のインバウンドの流れを取り入れるべく、海外へのプロモーション費用、ホームページなどの多言語対応の場合に補助金を出すという取り組みを行っていました。

    ―映画公開前に、「飛騨市が映画の舞台となる」という情報はどのようにキャッチしたのでしょうか。

     当初は、「飛騨市が舞台になっているらしい」という不確かな情報しかありませんでした。まずそれが本当かどうか確認しようと、映画関係者の方々などと連絡をとり、試写会を観るところまでたどり着きました。行ったのは私ですが、飛騨市にある似た景色が登場していたのでとても感情移入して観ることができました。なにより、飛騨市の風景がとても美しく描かれていたのに感動しました。さっそく職場に伝えたところ、「なにかプロモーションをしていこう」と動き出しました。

     試写会を観たのは2016年7月半ば。映画の公開は8月26日でしたから、わずか1ヵ月あまりで準備しなければなりませんでした。そのうえ、新たな予算があったわけでもないため、既存の予算のなかでやりくりすることになりました。

    ―具体的な取り組みを教えてください。

     まずポスターをつくりました。『君の名は。』製作委員会の協力のもと、映画のワンシーンの画像を入れたもので、「飛騨市は『君の名は。』を応援しています。飛騨市の豊かな自然を満喫しよう!」のコピーも入れました。ポスターと同時に、A4にリサイズしたものもつくって市内各所や各地でのキャンペーンで示しました。また、大きな効果が出たのがSNSの活用です。正直、SNSがこれほどの反響があるとは思いませんでした。

    ―なにをしたのですか。

     リアルタイム検索で「君の名は。」と検索すると、公開前にTwitterで聖地を探している方がいました。その方がキーパーソンになると確信し、公としてではなく個人名で「もしかしてここではないでしょうか」と画像とともにアップしました。すると公開直前には「舞台は飛騨市ではないか」とTwitterで話題になり、ものすごい勢いで情報が拡散していきました。そのためか、公開日直後から飛騨市に「聖地巡礼」で来られる方が増え、それがテレビや新聞などの国内外のメディアにも取り上げられました。当初は大学生など若年層が中心でしたが、公開2ヵ月目には家族連れや50、60代のシニア層まで幅広く来られるようになりました。台湾や香港、韓国、中国、アメリカなどでも公開されていったので、海外の方も来られるようになりました。

    ―プロモーションではどんなことに気をつけましたか。

     聖地巡礼に来ている方を見てわかったのは、映画のなかの世界を追体験したいということでした。映画と同じ場所や風景を目にすることで、映画を思い出し、その世界に浸るという感覚です。そのため、「ここが映画に出た場所ですよ。見て行ってください」と押しつけがましく”案内する”のではなく、あくまでも映画と同じものを”見せる”ことに注力しました。

     たとえば、映画にバス停のシーンがありました。ところが、前年にバス路線の見直しによって、バス停の標識がなくなっていました。会議の場で「標識ってもうないのかなぁ」という声が出ると、「それなら倉庫にまだある」と言うので、慌てて倉庫から取り出して映画と同じ場所に置きました。市長がそれをSNSで報告すると「神対応だ」と話題になり、一気に広まっていきました。

     また、「おもてなし」にも気をつけました。映画で飛騨市図書館が出ており、聖地巡礼者はほぼ100%そこに寄られます。じつは巡礼者の推計値はここのゲートから算出しています。、一般的には図書館内の撮影は禁止が多いなか巡礼者が撮影したがっていることはわかっていましたから、飛騨市図書館では事前に受付で許可証をもらった方は撮影してもいいということにしました。受付時に「動画はNG」「利用者の方を撮影しないように」「静かに撮ってください」など、いくつかのお願いをすることで、地元の利用者に迷惑をかけることはありませんでした。そして、「写真をSNSに投稿する場合は、『飛騨市の図書館に来たよ』と書いてください」という貼り紙をしたところ、SNSで話題になり、さらに高い注目を浴びるようになりました。

    岐阜県飛騨市データ

    人口2万4,982人(平成29年5月1日現在)
    世帯数8,937世帯(平成29年5月1日現在)
    予算規模288億3,796万2,000円(平成29年度当初:一般会計)
    面積792.53km²
    概要平成16年2月1日に、古川町、河合村、宮川村、神岡町の2町2村が合併し、飛騨市が誕生した。岐阜県の最北端に位置し、北は富山県、南は高山市、西は白川村に接しており、県庁所在地の岐阜市から約150km、高山市の北約15kmに位置している。 周囲は3,000mを越える北アルプスや飛騨山脈などの山々に囲まれ、総面積の約93%を森林が占めている。年間を通した平均気温は11度で、四季の移り変わりを肌で感じることができる、自然に恵まれた地域である。

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