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静岡県熱海市 の取り組み

予算ゼロ円・担当者ひとり。独自施策で観光客を呼び戻す

熱海市 観光経済課 山田 久貴

高度経済成長のころまでは、日本でも有数の観光地だった熱海市。しかし、経済の衰退とともに、徐々に観光客は減少していった。そんななか、全国でも珍しい❝ロケ地としてメディアを呼び込む❞施策で、地域のブランド構築に成功、観光客が年々増加する成果をあげている。そのキーパーソンが同市の観光経済課の山田氏。アイデアの源泉や実行上の工夫などを同氏に聞いた。

イベント頼みの観光政策では、集客はできない

―熱海市では、以前どんな課題を抱えていましたか。

 かつて日本を代表する温泉観光都市として、多くの方に人気でした。しかし、徐々に観光客の方に飽きられてしまい、経済的にもバブル崩壊などがあり、観光客の数は年々減っていました。若い方々に至っては、そもそも「熱海」という名前が旅行先にあがってこない。そんな状況になってしまったのです。

―何か対策は打っていなかったのでしょうか。

 観光客誘致の施策として、イベントを年間を通じて開催をしていました。しかし、言い方を変えれば「イベントに頼り切ってしまっていた」という側面がありました。夏休みや連休に合わせてイベントは組まれるため、一見するとイベントも大盛況。「観光客の誘致にもつながった」という錯覚に陥っていたんです。

 しかし考えてみれば、そもそも夏休みや連休は観光客が多い時期。その時にイベントを開催すればだいたいは集まるものです。主催した側からみると、一見イベントは大成功をおさめたように見える。でも、それはイベントがなくても観光に来てくれた人が参加しているだけ。イベントによって新たな観光客を集めたわけではない。まして、本質的に地域のファンになってくれて、何度も足を運んでくれるような観光客の目立った増加にはつながっていませんでした。

―そんななか、山田さんが着任した際は、どんな取り組みをしたのですか。

 「ほかの自治体がマネできないことが必要だ」と考えました。そこで、考えたのが「ADさん、いらっしゃい!」という企画です。テレビの情報バラエティ番組やドラマ、映画などの撮影に際して、ロケ地として選んでもらう。そしてその番組や映画を通して、全国の方々に「熱海」というキーワードを記憶に残してもらおうと。というのも熱海市には、マスメディアの本拠がある東京に近く、海があり、山があり、島もある。砂浜全体をライトアップするロマンティックなビーチがあり、芸妓文化もあります。多種多彩なホテルや旅館、飲食店などの施設も充実していて、さらには500以上の源泉を誇る温泉もある。

 ほかの自治体で、ここまでロケーションのよいところはめずらしいでしょう。

―具体的にはどんなことをしたのでしょう。

 番組の企画を聞いて、それに見合うネタ・施設の情報提供、取材交渉から、エキストラとなりえる地元住民の方の紹介や連絡調整、ロケバスなど撮影関係車両の移動ルートや待機場所に関する情報提供と手配まで支援します。各種公共施設の撮影許可申請の補助や目的外使用申請の調整、道路使用申請の代理提出・受領といった、公共機関ならではの支援もあります。

 それにくわえ、ロケ弁やロケ中の宿泊先、打ち上げ会場などの情報提供もします。「ロケ費用削減のために少し安い宿がいい」とか「大物芸能人を起用する撮影なので豪華なロケ弁にしたい」といった細かな要望にもこたえるほか、ビーチで爆破をしたいなどの難しい要望にも対応しています。

―どのくらいの予算をさいていますか。

 私の人件費以外、コストは一切かけていません。かつ、私ひとりですべての制作サイドからの案件に対応しています。休日や祝日、夜間でも個人的に対応しているので、制作サイドにとっては「24時間365日いつでも対応してくれる」ことになります。制作サイドを「顧客」ととらえ、徹底した顧客重視で対応しているのです。公務員で年中無休24時間ひとりで対応というのは、私ぐらいでしょう。これも「ほかにはマネできないだろう」と。

―全国でも初めての取り組みだったと思います。プロジェクトを進めるにあたって、庁内からの反発はありませんでしたか。

 いいえ。そもそも熱海市は、観光産業が主幹産業であり、ここが衰退してしまうと、街の発展はありえません。そういった背景もあり、市長も含め役所一丸となってこの取り組みを後押ししてくれました。

静岡県熱海市データ

人口3万7,720人(平成28年10月末現在)
世帯数2万21,335世帯(平成28年10月末現在)
予算規模180億8,800万円(平成28年度当初)
面積61.61km²

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