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佐賀県 の取り組み

“自発”を重視し、県民一人ひとりを主役にした取り組みをめざす

クチは出さずに下から支える それが佐賀県政の特徴です

佐賀県知事 山口 祥義

明治維新150年にあわせ、平成30年に「肥前さが幕末維新博覧会」の開催を予定している佐賀県。「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」を基本理念に、さまざまな施策が行われている。“地域活性化伝道師”として、国内のさまざまな地域振興に取り組んできた経験をもつ佐賀県知事の山口氏に、取り組みの詳細を聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.09(2017年7月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。

佐賀にある“本物”をグローバルに発信していく

―佐賀県政の基本理念が生まれた背景を教えてください。

 佐賀には、昔から世界に誇れる“本物”がたくさんあります。有田焼をはじめ、佐賀牛や呼子のイカといったおいしいものもそうですし、本当にすばらしい素材がそろっています。こうした価値を私たち自身が再認識し、国内の視点でなくむしろ世界を相手にその魅力を打ち出していこうというのが狙いです。

 今年は、日本が初めて万博に参加してから150年を迎えます。第2回パリ万博ですね。そのとき日本から参加したのは、江戸幕府と薩摩藩、そして佐賀藩なんです。世の中が国内にしか目を向けていなかった時代から、佐賀は世界に目を向けていたんですよ。そうした歴史があるので、グローバル基準にある県内のすばらしい素材を改めて伸ばしていきたいのです。

 また、なにかを成し遂げるには、人がいなければ始まりません。そのため、大切にすべき“人”を文頭にすえて「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」としたのです。

―基本理念の実現に向けて、どのようなことに取り組んでいますか。

 柱のひとつとして「自発の地域づくり さが」と銘打った取り組みを行っています。この政策で前提としているのは「心の過疎をなくすこと」と「自発」の2点です。

 知事になる前に、“地域活性化伝道師”として全国を飛び回っていたときに気づいたのですが、地域振興において障壁となるのは住民の「心の過疎」。つまり「地元にはなにもない」と思ってしまうことなんです。佐賀県民のなかにも、そうした意識があります。でも先にいったとおり、佐賀には“本物”がたくさんあります。ですから、県民が地元に誇りをもてるような取り組みを意識しています。

 2点目の「自発」は、いちばん重視しているポイントです。地域振興は、行政主体ではなく地域主体で自発的に取り組んだほうが長続きし、地域の総合力を高める近道になるからです。

県民や職員が主体となり次々とアイデアが生まれた

―具体的な施策を教えてください。

 たとえば、「さが段階チャレンジ交付金」です。これは地方創生における国からの交付金を県が使うのではなく、地域のみなさんからアイデアを募り、地域の取り組みに対して交付金で支援しようというもの。「どれくらい集まるだろう」と思っていたら、提案件数が400を超えて驚きました。内容を審査して、255事業を支援しました。「ドンコ舟」の遊覧体験や竹楽器の製作、エミューの飼育などさまざまな地域でユニークな取り組みが始まっています。必ずしもすべてがうまくいくとは限りませんが、地域発信で小さく始め、そこからヒットが生まれればいいなと思います。

 また、自発的な取り組みは県職員にも求めており、職員発の施策もどんどん生まれています。

―たとえばどんな施策ですか。

 私が妊婦体験をしたのは職員側からの提案でした。これまで子育て施策は行ってきましたが、妊婦のケアまでは頭が回っていなかった。私自身、8kgに近い妊婦ジャケットを着て買い物をしたり、バスに乗ったりしましたが、妊婦がいかに大変かを実感しましたね。

 そのほか、県庁で上映中のプロジェクションマッピングや佐賀県のすばらしい食材を、朝ごはんをテーマにPRする「あさご藩」といったプロジェクトも好評です。私が「ああしろ、こうしろ」というのではなく「こんなふうに考えてみよう」というと、職員からいろんなアイデアが出てくるようになり、手応えを感じています。

「志の誘致」を行うことで 地域に輪を広げていく

―ほかに佐賀県ならではの取り組みがあれば教えてください。

 いろいろありますが、特徴的なものでいうと「県外CSO(※)誘致」ですね。佐賀県では、企業誘致も推進していますが、CSO誘致にも積極的です。私はこれを「志の誘致」と呼んでいます。

 政策には、ひきこもりの方や障がい者、ひとり親などへの支援もあります。そうした分野は、行政とは別視点をもったCSOのほうが細かいところにまで手が届くと思っているんです。また、志をもった人たちを呼び込むことで、地域に志の輪が広がっていくのです。

 たとえば、児童養護施設に入所している子どもたちが施設を出た後、急に社会に出るとなにをしていいのかわからないことがあります。このようなときにNPO法人ブリッジフォースマイルという団体は、施設を出る前の早い段階から子どもたちに寄り添い、フォローをしています。

 ほかにも災害支援を行うNPO法人アジアパシフィックアライアンス・ジャパンなど5団体の誘致を達成しており、これからも積極的に誘致を行っていきます。

※CSO : Civil Society Organizations(市民社会組織)の略。佐賀県ではNPO法人、市民活動・ボランティア団体に限らず、自治会・町内会、婦人会、老人会、PTAといった組織・団体を含めて、「CSO」と呼称

地域振興の領域では知事の立場はいちばん下

―こうした取り組みを行っていくうえで山口さんが心がけていることはありますか。

 やはり、自発性を最優先して、地域でそれぞれがんばっている人たちを応援することですね。首長はついつい「自分が自分が」と、トップダウンで指示をしがち。でもそれを「ぐっ」と飲み込んで、周りから自然に意見が出るのを待つ。それが大事なのかなと。

 また、そうした新しい意見が出るような環境を整えるのも私の仕事です。CSO誘致を行っているのもその一環です。身内で固まっているとアイデアも出てこないし、人間関係が固定化されるので、外部の考えを取り入れるために誘致し、交流するためのベースを私たちがしっかりつくるのです。

 トップが率先して行動するときもあります。災害対策はその一例でしょう。一方、地域振興においては逆三角形の構図にする必要があると思っています。現場が主役で私はいちばん下。全体を見つつもクチは出さず、一生懸命支える。それが佐賀県政の特徴かな、と思っています。

―改めて、今後の行政方針を教えてください。

 来年には「肥前さが幕末維新博覧会」、その翌年には「ラグビーワールドカップ2019」や「全国高等学校総合文化祭佐賀大会」なども控えています。当面はこうしたイベントに焦点をあて、佐賀県をPRしていこうと考えています。

 佐賀には「葉隠」の心が根づいていて、自らアピールすることを美徳としない風潮があります。「佐賀はなんもなかもんね」と自虐的な発言がたびたび聞かれることもあり、残念に思っています。繰り返しますが、佐賀にはすばらしい素材がたくさんあり、「薩長土肥」で培ってきたものづくりも人づくりもそろっています。それらを活用し、工夫しながらいろいろと情報発信をしていきます。

「佐賀さいこう!」と、声をあげることも取り組みのひとつ。ポジティブに叫んでいると、みんなの気持ちも高揚してきますから。これからも「佐賀さいこう!」を合言葉に、県民一人ひとりが主役となる政策を行っていきます。

山口 祥義(やまぐち よしのり)プロフィール

昭和40年生まれ、佐賀県出身。平成元年に東京大学法学部卒業後、自治省(現:総務省)に入省。内閣安全保障・危機管理室参事官補や総務省過疎対策室長のほか、鳥取県商工労働部長、長崎県総務部長を歴任するなど、地方自治体でも豊富な経験を積む。平成25年、官民交流でJTB総研地域振興ディレクター、ラグビーワールドカップ2019組織委員会事務総長特別補佐を務めるなど民間でも活躍。東京大学教授(大学院総合文化研究科)、地域活性化伝道師(内閣官房)、地域力創造アドバイザー(総務省)として全国の地域支援に尽力。平成27年1月、佐賀県知事に就任。

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