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「もっとも人口が少ない都道府県」が挑む独自の政策とは

知恵と行動力があれば小自治体こそ武器 「スモール イズ ストロング」なんです

鳥取県知事 平井 伸治

47都道府県のなかで、もっとも人口が少ない鳥取県。知事の平井氏が初当選した平成19 年には、初めて人口が60万人を割るという事態が起こった。人口減少にくわえて少子高齢化という課題に対し、鳥取県は大きな危機感をもって対策に取り組んできた。その目玉が「移住定住支援」「子育て支援」である。3期にわたって政策の旗手を務め続けている平井氏に、詳細を聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.6(2016年10月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。

移住定住希望は高齢者という思い込みが先行していた

―鳥取県が取り組んでいる「移住定住支援」「子育て支援」についての詳細を教えてください。

 それではまず、「移住定住支援」についてお話しさせていただきます。私が知事に就任した平成19年に人口が初めて60万人を切った事実は、鳥取県にとって本当に衝撃的な出来事でした。そこで転出者数が転入者数を上回ることによる社会減少を減らそうと、県政の方針を180度転換したんです。

 それまでは「移住定住希望者は定年を迎えた高齢者ばかりで、支援しても医療費や介護費の増大につながりかねない」と、支援政策はほとんど行っていませんでした。しかし、私は「やらないための理屈ではないか」と違和感を覚えたんです。そこでまずは、移住定住支援のための組織をつくるところからはじめました。

 次に行ったのが家の改修事業。なかでも台所やトイレといった水回りの改修です。移住定住を検討している人に空き家を紹介する際、とくに女性の方が使い古された水回りを見ると「これはちょっと住めない」となってしまう。これが盲点でした。そこで県と市町村が協力する形で改修を進めました。

―ほかにどんなことに取り組みましたか。

『お試し住宅』の整備です。移住定住をする際、見ず知らずの場所であれば不安を感じるもの。そこで短期滞在用の住居を用意し、その土地の風土や気候を体感したり、地元の方と交流してもらおうという取り組みです。いわば移住定住の検討者と地域とのお見合いですね。こうした住居はもう20棟を超えています。

 そのほか農林水産業に興味をもっている方の場合、一人前になるまで給付金を支給するなど、就労支援も行っています。国も青年就農給付金を交付していますが、鳥取県は、それに先駆けて取り組んできました。

県外からはもちろん海外から移住してくる人も

―もうひとつの「子育て支援」はどんな取り組みを行っているのでしょう。

 こちらは出生率の下降による人口の自然減少をとめるべく、「子育て王国鳥取県」と銘打ってさまざまな施策を行っています。

 たとえば保育士の数。国の定めた基準だとなかなか十分なケアができないので、その基準以上の保育士を配置しています。また、中山間地の保育料は無償。第三子以降は都市部でも無償。第二子の場合も低所得世帯は無償にしています。こうした話を移住相談会などで話すと、みなさんは「へ~」と感心してくれます(笑)。

 なかでも注目されているのは『森のようちえん』ですね。こちらは県庁からスピンアウトした女性が始めた事業ですが、この森のようちえんには園舎がありません。文字通り森のなかで朝から一日中、園児を遊ばせ、自らなにかを発見して学んだりたくましさを身につけさせるという取り組みです。これが「自然のなかで子どもを伸び伸びと育てたい」という親御さんに人気で、県外はもちろん、海外からも引っ越してこられるケースも。

 こうした取り組みに県も助成金を給付するなど、さまざまなタイアップを行っています。

―そうした取り組みの結果、どのような成果がありましたか。

 まず、昨年は1952人の方が鳥取県に移住されました。人口がいちばん少ない県ではありますが、人口の割合にしてみれば驚異的な数字だと思います。そして昨年の合計特殊出生率は1.69で、全国4位となりました。 また、移住者のうち約7割が20~30代という結果に。「高齢者ばかりでは」との予想は、杞憂に終わりました。考えてみると、20~30代は子育てに敏感な世代。「移住定住支援」と「子育て支援」の複合的な取り組みが結果にもつながったのだと思います。

 もちろんこれは県だけの手柄ではなく、市町村や住民の協力があってのこと。県と市町村、住民が三位一体となり、現場の声に耳を傾けて率直に対応したからこその結果なのだと思っています。

公務の効率化を推し進め内部管理のムダを省く

―行政をスムーズに行ううえで、取り組んでいることはありますか。

 仕事のムダ、ぜい肉を省く取り組みを行っています。具体的には、全庁に呼びかけて内部管理のペーパーレス化を進めています。

 えてして自治体の職員は、査定するのが好きなんです。組織のなかで大きな顔をしたいと(笑)。するといろんな人に説明書類をつくらないといけなくなり、ペーパーワークがとめどなく増えてしまう。予算・決算にしても、出先機関に送る説明資料、財政当局に送る説明資料…など、とにかく説明資料をつくることに忙殺され、職員も疲弊してしまいます。そこで、すべての書類をデータベース上で処理し、全職員で共有するように。すると、いちいち各部署用に説明書類をつくる必要がなくなり、超過勤務がごっそり減りました。

 また、どの都道府県にも課長、次長、部長がいると思いますが、鳥取県では次長を基本的に廃止しています。責任を負う人は少ないほうがいちいち判断をあおがなくていいですから。

 さらに、予算査定も各役職でいちいち査定せず、私の一発査定にしています。そうすることで、あらゆるムダを排除しています。

行動に移さなければなにもはじまらない

―平井さんが行政経営で大事にしていることはなんでしょう。

 つねに知恵を絞り、スピーディに実行に移すことですね。

 イギリスの経済学者である(※)シューマッハーは「スモール イズ ビューティフル」とおっしゃっていましたが、私は「スモール イズ ストロング」だと考えています。小さいものが強くなるためには、やはり知恵と行動が勝負どころになると思うんですよ。ちょっと脱線するかもしれませんが、私は最近「カネはないけどカニはいる」とPRしたり、『ポケモンGO』を楽しんでもらおうと「鳥取砂丘スナホ・ゲーム解放区」として宣言しました。これらは広告費ゼロです。それでも人は鳥取県に足を運んでくれるんですよ。ちなみに「スナホ」は砂とスマホをかけています(笑)。

※シューマッハー : エルンスト・フリードリヒ・シューマッハー。「スモール イズ ビューティフル」は同氏が執筆した、経済学に関するエッセイ集

―平井さんのそうしたPR活動はメディアでよく目にします。

 ありがとうございます。つまり、なにが言いたいかというと、やはり知恵を絞って行動すれば、リソ
ースがなくてもなにかを変える力はあるんです。たとえば鳥取県では全国に先駆けて手話を「言語」として扱う「鳥取県手話言語条例」を制定しました。それが全国8県、52自治体にひろがり、いまでは全自治体で法制定を求める決議が出されています。

 そうした「うねり」を起こすためには、やはり行動を起こす人がいないといけない。そうした私たち
の気概と実行力。これが問われているんです。それをやり抜くことさえできれば、小さい自治体のほうが現場の声も聞きやすく、小回りが利いてスピーディに実行できるのではないかと。そのための説明責任は、首長である私が果たしていきます。

平井 伸治(ひらい しんじ)プロフィール

昭和36年、東京都生まれ。昭和59年に東京大学法学部を卒業後、自治省(現・総務省)に入省。その後、兵庫県や福井県にて地方行政の実務や制度改正などに取り組む。平成11年に鳥取県総務部長に就任し、平成13年に全国最年少(当時)で鳥取県副知事に就任する。総務省勤務、自治体国際化協会ニューヨーク事務所長などを経て、平成19年に鳥取県知事に初当選。平成27年に3選を果たす。「移住定住支援」「子育て支援」を中心にさまざまな政策に取り組みつつ、自らメディアに露出して鳥取県のPR活動も積極的に行っている。

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