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若き首長が推し進める独自の産業振興計画とは

まずはビジョンを明確にして 施策の道しるべを示せ

高知県知事 尾﨑 正直

全国に先がけて平成2年から人口が自然減の状態におちいった高知県。その影響で県内の経済が縮小し、若者離れ、過疎化、高齢化が進んでいた。それが近年取り組んでいる産業振興計画により、盛り返しを見せている。平成19年当時、全国最年少の40歳で知事に就任。以降、地方活性化の旗手として産業振興計画を全力で推し進めてきた尾﨑氏に、具体的な施策や地方創生のポイントを聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.3(2015年9月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。

キーワードは「地産外商」

―平成19年に知事に就任した際、高知県はどのような状況でしたか。

 ひと言でいうと、「人口減少による負のスパイラル」におちいっていました。人口が減ることで経済規模が縮小し、若者が働く場を求めて県外に流出してしまう。それにより過疎化と高齢化が進行し、少子化が加速。そのため、さらに人口が減少するといった具合です。
 数字でいうと、たとえば県内の年間商品販売額は10年前の2兆円から1兆6000億円に減少。有効求人倍率は日本全体が1倍を超えるなか、約10年間にわたり0.4~0.5倍という非常に厳しい状況でした。

―そんななか、どのような手立てを講じたのでしょう。

 足元の経済規模が縮んでいるなら、外に打って出て「外貨」を稼いでいかなければならない。つまり「地産地消」にとどまらず「地産外商」を進めていこうと考えました。
 これをカタチにするため、就任後の1年間、県内34市町村の関係者や産業界の方とさまざまな議論を交わしました。そこでは「外商が必要なのはわかるが、できない要因がたくさんある」という話がよく出てきました。
 外商といっても、東京に営業支店がある高知の会社は多くないのではないか。さらに、高齢化が進む中山間地域のおじいちゃんおばあちゃんが飛行機に乗って県外に売り込みに行けるわけがない。そもそも、県外で売れる付加価値の高い商品をつくれるのか―。「地産外商」に取り組むために、こうした一つひとつの課題に対して確実にクリアする施策が必要でした。
 そうしてまとめたのが「高知県産業振興計画」です。平成21年から実行し、バージョンアップを繰り返しながら取り組み続けています。

売り込みを強化しつつ自力を高めていく

―産業振興計画の詳細を教えてください。

 まずは「地産外商」の「外商」を強化すること。民間だけで売り込むのが難しいのであれば、外商を行うプラットフォームを県がつくって利用してもらおうと。そこで「高知県地産外商公社」を立ち上げました。
 公社では、県内事業者の営業に同行したり、スーパーやデパートに掛けあって大規模な展示商談会を開催。東京・銀座一丁目でアンテナショップ「まるごと高知」の運営も行っています。そこでは特産品の販売だけでなく、ミニ商談会も実施。これらの商談から生まれた営業のチャンスを後追いしたり、立ち上げた当初は飛び込み営業も行っていました。
 平成21年には178件だった成約件数は平成26年には4393件にアップ。平成26年度の成約金額も16億円超にまで伸びています。

―「地産外商」の「地産」はどのように強化しているのでしょう。

 付加価値の高い商品をつくるためにアドバイザーを派遣したり、テストマーケティングの機会を提供しています。そして、県が運営する「工業技術センター」による技術指導や「ものづくり地産地消・外商センター」で県内事業者同士をマッチングする支援などを実施。平成26年の相談数は550件、そのうちマッチングした数は95件となっていますね。
 さらに、高知県の強みである第一次産業を活かして関連産業である食品加工を拡充していくとともに、美しい自然や坂本龍馬をはじめとする歴史を取り入れた観光産業を強化。具体的には、地域ごとに資源を活かして新しく事業化しようとする際には、地域に駐在させている県職員が市町村職員とともにプランニングの段階から支援。これを「地域アクションプラン」と呼んでいます。
 また、高知県では「南海トラフ地震対策」を積極的に推し進めており、防災に関する技術やノウハウが豊富です。これを活かし、新産業として「防災関連産業」を成長させていこうとしています。
「地域アクションプラン」は現在、およそ240事業を実施。観光客数は入込客ベースで約310万人だったのが、近年は400万人以上を維持しています。
 このようにして「地産外商」を担うラインアップをどんどん広げているところです。

人材誘致のスタンスは移住促進×担い手の確保

―ほかに取り組んでいることはありますか。

 人材の育成および誘致を推し進めています。
 まずは人材の育成。「地産外商」を維持、拡大するためには事業を支える人材が必要不可欠です。そのため、産学官民が連携してマーケティングや経営戦略を学ぶことができる社会人向けビジネス講座「土佐まるごとビジネスアカデミー」を創設しました。
 そのなかでも「目指せ! 弥太郎商人(あきんど)塾」では実際に商品をつくってプレゼンし、売り込み実習を行うなど実践的な研修を行っていますし、農産品の6次化などを志す人向けの「農業創造セミナー」も開催しています。
 実際にセミナーの卒業生から「地域アクションプラン」を引っ張る人材が生まれており、「地産外商」の担い手となっています。また、セミナーを通じて多くの先生とのつながりが生まれ、新たな販路の開拓にもつながっています。

―人材の誘致に関してはいかがでしょう。

 移住促進の取り組みを強化しています。最初は、少しでも人口減少に歯止めをかけるのが狙いでしたが、近年は「地産外商」を担う人材を県外から誘致したいという思いが強くなっています。
 当初は「移住コンシェルジュ」としてワンストップの窓口を設け、移住を検討している人をサポートするのがメインの業務でしたが、現在では人材確保のサポート事業と連携して積極的に情報を提供するようにしています。具体的には今年4月に立ち上げた「事業承継・人材確保センター」で県内の事業者と外部人材とのマッチングを図りつつ、移住の相談にのるという施策を行っています。
 平成26年度の移住者数は403組、652人。今年度は500組が目標です。

行財政改革中のときは注意すべきと心得よ

―高知県が進めている取り組みは、まさに地方創生のあり方のひとつを示唆していると思います。取り組むためのポイントはなんですか。

 えらそうなことはいえませんし、また多くの方が指摘されていることだと思いますが、やはりまずはトップがビジョンと施策の方向性を示すことが大事だと思います。規模が小さいとされている高知県庁でも約3300人の職員がいます。統率を図るためには全員が同じベクトルを持つ必要があります。だから私は、「高知県をよくするためには地産外商が必要だ」と目指す方向を明確にしました。
 また、多くの方に意見を聞き、高知にとって本当に必要な計画づくりにこだわりました。決してコンサルまかせにはしませんでしたし、職員にも丸投げにはせず、私自身も徹底して議論に参加しています。結果、絵に描いた餅ではなく、実行可能な計画になったと思います。
 さらに、課や個別の分野ごとに目標をもち、細かくPDCAサイクルを回すことも重視しました。県庁では四半期に一度、2日間をかけてPDCAを検証する会議を設けています。それを続けていくと、小さな成功事例が積み重なっていきます。すると「やればできるじゃないか」という雰囲気が生まれ、やがて職員自らが積極的にPDCAを回すようになるのです。
 計画を進めるうえで要注意なのは、行財政改革中のときですね。

―それはなぜですか。

「お金がないからできない」といっているうちに、それがだんだんラクになっていくんです。仕事をしなくていいわけですから。行財政改革がいつの間にか業務を減らす免罪符になり、改革がまったく進まないというのは大いにありえる話です。私が就任当時、高知県庁にもそんな風潮がなかったとは言い切れません。
 明確なビジョンと目標があり、成功事例が積み重なれば、そのような働く姿勢にはなりません。使命を果たすために、昼夜問わずがんばる人が多いというのは公務員がもつ美徳のひとつ。その側面がいかんなく発揮されるのではないかと考えています。
 現在のところ一定の成果は出ていますが、県勢浮揚に向けた産業振興計画の取り組みはまだまだ途中。今後は海外への輸出や外国人観光客の誘致強化を図っていきます。「地産外商」の第二ステージとして、大きな挑戦は続きます。

尾﨑 正直(おざき まさなお)プロフィール

昭和42年、高知県生まれ。平成3年に東京大学経済学部を卒業後、大蔵省(現・財務省)に入省。在インドネシア日本大使館書記官、財務省主計局主査、理財局計画官補佐などを歴任する。その後、内閣官房副長官秘書官を経て、平成19年に高知県知事選挙に立候補し、当選。独自の産業振興計画に基づき、地方の活性化を進めている。平成23年に再選。教育再生実行会議委員、四国地方産業競争力協議会の会長なども務めている。

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